病院から出てすぐ脇にあるベンチに座る。
「……ふう」
「大丈夫?」
「うん。寝てる間に体力とか筋力が落ちちゃったみたいで。うまく動けないなぁって」
「そっか、お姉ちゃんは運動得意だったから…あ!い、今のは…えっと……」
両手で口を押さえる勇太くん。
私の前で、"前のお姉ちゃん"のことを話してしまわないように、気を使おうとみんなで決めたんだろうな。
「ごめんね、勇太くん」
「え?」
「今の私も、前の私も。多分私だと思うから」
この世界の"私"と、私は共通点が多々ある。
トリップ…あ、死んだから転生トリップか?原因は分からないが、此処に居る以上は。
「話して?私のこと。君達のこと。勇太くんやみんなのこと。もっと知りたいって思うから」
「じゃあ…また、お姉ちゃんって呼んでいい?」
「うん」
「夏休みの宿題、見てくれる?」
「あははっ…分かる範囲でね」
「お姉ちゃん…!美空お姉ちゃん!」
泣きながら抱きついてくる勇太くん。
「ボク、ボク…っ!」
「勇太くんが無事で良かった」
「ふぇっ…ぅく」
「だから謝らないでね?」
「う、うわぁぁあん!お姉ちゃぁん…!」
「なぁに?」
「許してぐれてっ、ありがとっ、う!」
「こちらこそ…ありがとう……」
側にいてくれて。心配してくれて。
「ぐすっ…」
「スンッ…はい、ティッシュ」
「ありがとお姉ちゃん…うぶっ」
「はい、ちーん」
「……ぶーっ」
「よし」
鼻をかんだティッシュを近くのゴミ箱に捨てて戻ると。
照れくさそうに勇太くんが待っていた。
恥ずかしかったようだ。
「ただいま」
「おっ、お帰り!…えへへ」
(うん。可愛い)
「お姉ちゃん?」
「ん?」
ぼーっとしていると話しかけられる。
「お姉ちゃんは、いつから学校に行くの?」
「えっ!私、学生なの?」
「あずき姉ちゃんと同じ高校生だよ。学年は…一つ上の三年生!」
「…」
学生。6か月休み。つまり、
「出席日数足りねえええええ!!」
その日、病院の敷地内に美空の叫び声が響き渡った。