ターゲットにされ、命を狙われているなんて知らない勇太はパワージョーと会話していた。
しかし忘れてはいけない。
彼は現在進行形で遅刻しそうなのだ。
「いっけねぇ!こんなことしてるじゃないや!学校に遅刻しちゃう!」
美空がいたなら遅刻より命の危険に気づいて欲しいとツッコミを入れるだろうが、残念ながら今ここに彼女はいない。
「友永勇太…君には芳醇な香り漂う死をプレゼントするザンス。やれ、スティンガー」
ムッシュ・モンドーがターゲットを処分する際に用いるのは、暗殺用仕事人メカと呼ばれているロボットだ。
彼が発したスティンガーという名は、蜘蛛を模した小型ロボットの名称である。
スティンガーは勇太の頭上にある電線を伝い狙いをつけ、鋭利な針を発射した。
勢いのあるその針は、小学四年生の勇太の命を奪うのに十二分に威力を…発揮しなかった。
パワージョーのシャベルが針を遮ったからだ。
「何ィーー!?」
「待てよボス。遅刻しそうなんだろ?学校まで送るぜ」
「い、いいよパワージョー!」
「遠慮すんなって」
「いいってばぁ!うわああああっ!」
叫び声と共にターゲットと一機との距離が広くなっていく。
しかし、ムッシュ・モンドーは焦らない。
勇太の通う小学校の場所は既に調べ済みだ。
彼はスティンガーの残骸を一瞥した後に、次なる仕事人メカを放った。
「まだチャンスはある。…アディントン。コザック。白星美空に、粛として静謐な死を送ってくるザンス」
名称を呼ばれた仕事人メカは、電子音を一つ鳴らすと青空と雲に紛れるように消えた。
「はぷしょっ!へっくしゅ!」
「どうしたボス?風邪か?」
「だ、大丈夫…それよりもう下ろしてよパワージョー!」
「へへっ、遠慮すんなって。もう着くし」
「えっ!?」
パワージョーのショベルに無理矢理乗せられた勇太は、自分を下ろすように何度も言ったが、聞き入れられること無く小学校へと到着した。
「さっさと仕事に帰れよパワージョー!」
「そう言うなよボス」
周囲の注目を否応無く集めてしまい羞恥に顔を染めた彼は、ショベルから降りるとパワージョーにいいかげん帰るように伝えていると。
「よう、勇太」
「あ…勝気、菊麿、絵美里ちゃん」
勇太のクラスメイトである、喜多川勝気・愛原絵美里・鷹野菊麿の3人が声をかけてくる。
そのうちの一人である鷹野菊麿が、勇太の背後にいるパワージョーに気づいた。
今は登校時間。
彼ら以外にも生徒が続々と登校している。
小学校の校門前は、本物のブレイブポリスがいるせいで一目見ようとする生徒達でごった返した。
自身が注目の的になっていることに気を良くしたパワージョーは、勝手に周りにいる小学生達に自分が得意とするカンフーを教えようとする始末。
「わっ、パワージョー!まずいって!」
混乱に乗じムッシュ・モンドーは小型の仕事人メカ・チェリーブロッサムを勇太にけしかけた。
しかし小型ゆえに強度が足りなかったため、小学四年生の勇太に踏まれただけで壊れてしまった。
「おおぉぉ〜!?チェリーブロッサム!?」
「うわっ!?なんだぁ?」
「何の騒ぎです!」
「レイコ先生!」
騒ぎはとうとう担任に気付かれてしまい見咎められた彼は叱られて、朝から散々な目に遭うのだった。
彼は知らない。
パワージョーの止まらない好奇心のせいで、授業中にも散々な目に遭うことを。