「へぇ〜毎日この上り坂を…」
「えぇ、散歩するのが日課なの」
「健康的ですね」
動かない人影は歩道で休憩中のお婆さんだった。話を聞くと、散歩するのが日課で今日は散歩がてら買い物もしたのだが、帰り道暑くてバテてしまい、休憩中だったらしい。
「はい、良かったらこれどうぞ」
「ありがとうねぇ…あら、お嬢さんの分は」
「あぁ、ありますから大丈夫です」
ブロックに座り込んでリュックからお婆さんに未開封のペットボトルのお茶を渡し、自分は水を飲む美空。
のどを潤して一息つく。
まだ昼前。アスファルト舗装道路の照り返しが熱い。そしてこれからますます気温も上がっていくだろう。
美空は提案した。
「おばあちゃん。良かったら私の自転車で荷物お運びしましょうか?坂上りきるまで大変でしょう」
「何から何まで…ありがとうねぇ〜」
「いえいえ、困った時はお互い様ですから」
自分だけさっさと行くのは気が引けたのでそう言うと、お婆さんは提案に乗ってくれた。自転車の前後の籠に荷物に入れ二人で歩き出す。
ところが。歩いてすぐ。前からランニングで坂を下ってきた男が美空を突き飛ばし、自転車とお婆さんの手荷物をひったくり逃げた。
「あっ!?」
「待てぇっ!…って」
走って追い掛けようとした美空だがお婆さんを一人残すのに躊躇する。
そして今日はサンダル履き。走り慣れた靴ではない。
「とにかく警察に!」
「え、えぇ…」
携帯で連絡し、警察に繋がったのを確認してお婆さんに携帯を渡す。
《はい、警察です》
「おばあちゃん!ちゃんと言うんだよ!」
「お嬢さん!?」
《どうされましたか?》
「えっ、えっと…今ひったくりに遭って」
美空は坂道を駆け下りていた。
今度は躊躇無くスピードを上げるため、盗まれた自転車が目に入った。
だが追いつけない。
市街地に入られたら逃げられる。そう思い周囲に助けを求めて叫んだ。
「誰かぁぁあ!ドロボー!ひったくりぃい!チャリと荷物と鞄返せー!!」
「ゲッ!」
疎らにいた周囲の通行人は気づいてくれたが、自転車がスピードを上げてしまい誰も捕まえられない。
「あぁ…」
(ダメか…)
諦めかけたその時。
「チェーンジ!」
「うわぁあっ!?」
「えっ!?」
聞き覚えのある掛け声。デッカードが応援に駆けつけてくれたかと思ったが、声がブレイブポリスの誰でも無い。
気になった美空は痛む脇腹を押さえ、様子を見に行った。