現状悲惨奮闘中(2)

学校から出た美空と友永あずきは病院に戻り、担当医に事のあらましを伝える。

「じゃあ白星さんは日常生活をする意志があるのですね?」
「はい」
「なら、傷は完治しているし本人たっての希望という事で、退院を許可します」
「ありがとうございます!」
「頑張ってください。何か体調に変化があったら、すぐ病院に来てくださいね?」
「はい。お世話になりました!」

その日の内に退院。
友永あずきと共に自宅近くの商店街で参考書や小学生用のドリルを買い、帰宅した。
移動回数が多く、帰宅した頃には夕日が地平線にほとんど沈んでいた。

「すみません。こんな時間まで付き合わせて…」
「いえ…私、これぐらいしか美空ちゃんにしてあげられないから…」
「…」

空気が重い。

「こんなことな訳無いよ」
「え?」
「私は今何も分かんなくて、イかれてるって言われても反論出来ない」
「そんなこと!」
「今、貴女が側にいてくれているだけで。話を聞いてくれるだけで、私はこんなにも助かっている。救われている」
「!」

畳みかけるように続ける。

「身勝手だけど、勇太くんにも言ったから」
「え?」
「過去の私も、今の私も、きっと私だからって。と!言うわけで!」

美空は両手を打ち合わせ。

「私が勇太くんを助けたかっただけ!悔い無し!以上!くよくよ終わり!…ね?」
「美空ちゃん…」
「あーお腹空いた!ご飯食べたら勉強するぞ!じゃあ、今日はありがとう!」
「あっ…また明日!」
「おーっ!」

そう言って家に入っていく美空の姿を、友永あずきは見つめていたのだった。

「あずきさん、泣きそうだったな…」

閉じた玄関ドアを背もたれに座り込んだ美空は、別れる前の姿を振り返った。
不安げに揺れていた瞳と声。
笑顔もぎこちなかった。

(私、いないほうがいいのかな?)

「──考えても仕方ない!勉強だ勉強!」

夕食を食べ、朝方まで美空は勉強し続け。徹夜した。
仮眠を数時間取り、早い朝食を寝ぼけ眼で口の中に詰め込む美空。
スープを飲んで一息ついたところで玄関のチャイムが鳴った。

「誰だこんな時間に…はーい」
「美空お姉ちゃん!」
「勇太君?」

急いでドアを開ける。

「どうしたの?こんな朝早く」
「あの、あずき姉ちゃんと買い物行ったんだよね?」
「へ?うん。勉強道具買ってきたよ。もう小学生用ドリルは終わった」
「じゃ、じゃあ勉強教えてよ!」
「自信ないけどいいよ」
「ありがとう!」

(さては宿題終わらせないと遊んじゃ駄目って言われたな…)

招き入れドアを閉める。

「ご飯食べて来た?」
「あ、まだだ…」
「よかったら私作ったの食べる?あずきさんより美味しくないだろうけど」
「…あれ!あずき姉ちゃんがご飯作ってるって言ったっけ?」
「あ…ない、ね」
「あはは!美空お姉ちゃん、あずき姉ちゃんのお菓子とか貰ってたから身体が覚えてるんだよ!」
「良い覚え方だね。じゃあ勇太君がご飯食べたら、みっちり、ガッツリ、しっかり何度も練習して勉強内容覚えようね」

笑顔で青ざめる勇太に美空は思わず吹き出した。

「ちゃんと休憩するから大丈夫だよ」
「も〜!」
「あっはっはっ!」

書き置きを残してきたらしく、勇太君の朝食を準備している間に一度姉妹が様子を見に来た。

「あら、くるみさんおはよう」
「おはようございます!勇太ズルい!私も美空さんのご飯食べたい〜!あ、美空さん私のことさん付けしなくていいですからね!」
「分かった、ありがとう"くーちゃん"」
「「「!!」」」
「?」
「…今日は良い日になるわ!」
「あぁ〜ん!何で今日用事があるのよ!」
「そうね…」
「"あずきちゃん?"」
「今日の夕飯は奮発するわね」
「あ、あずき姉ちゃんまで!?」

(何か嬉しそうだな…)

ハイテンションにお茶を飲んだら姉妹は用事があるらしく、すぐに出て行った。

「じゃあ勉強始めようか」
「はい!よろしくお願いします!」
「こちらこそ〜」

早速宿題をやり始める二人。

「うーん…」
「美空お姉ちゃん」

「どうかした勇太君?」
「…何でもないや!それよりコレ、分かんない!」
「えっと…社会か。これは20XX年に発明家バシュークラムが起こした…」

数時間後。

「よし、終わり…と」
「ひゃあ〜っ疲れた!」
「お疲れ様"勇君"」
「!…美空お姉ちゃん!ありがとう!」
「…やっぱり、みんなの愛称言ってたんだね私」

伸びの体勢のまま固まる勇太。