甘さに吞まれる(3)
「ロビンしゃん」「ん?どうした?」
「楽しい?」
「あぁ、楽しいよ。日本に来るといつも世話になってしまっているな。すまない」
「ううん。あのね、えっとね」
沙希は正座し言葉を探しながら、今度はウォーズマンの残していったウォッカを嘗めている。宙に答えを探すように目線をさ迷わせて、少し経った後。秘密を吐露するように、沙希はロビンにおねだりした。
「頭、なでなでしてほしい」
「いいとも」
「えへへ。やったぁ〜」
「今日はずいぶんと甘えたなんだな?」
婚約者とは違う黒髪の乙女の願いを聞き入れ、ロビンマスクは彼女の頭をそっと撫でた。
絹のように滑らかに指からこぼれる夜の川に何度も触れる。
「ありがとーございます」
「何がかな?」
「どれも。ロビンさんがキン肉マンさんに声かけなかったら、今の生活とか出会いとか無かったかもしれなくて…こんなに素敵な友達できなかっただろうって思って」
「…そうかな?タイミングはズレるかもしれないが、キン肉マンはいずれ大衆に認められただろう」
「有象無象の輩よりぃ、ロビンさんのほうが素敵ですぅ〜」
そう言うと沙希は、手の上に軽く音を鳴らすだけのキスを落とした。
「ハハハ。そうか、ありがとう」
「自他に厳しいからロビンさんは…。だから此処でくらいは、ゆる〜く楽しんでねって」
「ふむ…」
「狭いけど、ロビンさんとアリサさんが日本で過ごすときの別荘くらいに思っててくださいよ。歓迎しましゅから」
「それは頼もしい限りだ」
「よし!言質取った!次行こう!!」
「げ、言質…」
フラフラと立ち上がった沙希。しかし、空き缶に足を取られバランスを崩す。
「危ねぇっ!」
「……おぉ。流石牛さん。突進力は世界一〜〜!」
「だぁれが牛さんだぁあ!」
「うるさいなぁモォ〜〜」
「モォ〜〜!」
「「ぎゃはははは!!」」
危機一髪を救われ、角にしがみつきながらバッファローマンとじゃれ合う沙希は年の離れた兄妹のようだ。ロビンマスクは微笑ましく思いながらその様子を見つめた。
「バッさん腕ぶら下がりた〜い!」
「いいぞ。ホラッ!」
「きゃあああ〜!」
歓声を上げる彼女は、今日のイベントではしゃいでいた子供と同じで。
(彼女も参加したかったのか…)
ロビンマスクは合点がいった。
「バッファしゃん」
「ん?どした?」
「肩車して〜」
「おう!」
よっと、と軽々沙希の身体を持ち上げたバッファローマンは、はしゃぐ彼女を落とさないよう肩車してあげた。天井に頭がつきそうな沙希はバッファローマンの頭を、角に気をつけながら抱える。
「もしゃもしゃ…」
「そういうアンタはふにゃふにゃだな。頭にやわっこい塊が」
「えっち!」
「イデデデデ!!悪かった悪かった!」
「よろしい!」
「尻に敷かれてるな。バッファローマン」
「あ!麺しゃん!ご飯ありがと〜!」
「口に合ったようで何よりだ。バッファローマン、落とすなよ」
「分かってる」
「ふふふふ〜…2000万パワーズ!!」
「おい!暴れるなって!」
「はい!しゅみましぇん!」
ラーメンマンとバッファローマンが仲良さげ(?)に話していることが嬉しいのか。バッファローマンの頭をワシャワシャ撫で繰り返す沙希は一人でニコニコしている。
酔っぱらいの思考回路は分からないものだ。
「あぁ〜…もう寝たらどうだ?」
酔い潰れたジェロニモを見せて提案するが。
「まだ!!」
「仕方ねぇな…」
「程々にな?約束だぞ?」
「あい!」
笑いながら顔を掴むバッファローマンの掌にキスしながら返事する沙希。
ポカンとする彼の手から逃れ、器用に背中から降りた彼女は、ウルフマンと呑み比べしているブロッケンJrに背後から近寄った。