甘さに吞まれる(2)
最初に異変に気付いたのはウォーズマンだった。(何だ?沙希さんの体温が上昇している)
「沙希さん、大丈夫か?」
「え?」
「顔が赤い。測定した結果体温が上昇しているようだ」
「う〜ん、具合悪い感じはしないけど。ご飯食べたら休もうかな?」
「おいおいもうおねんねかよ沙希!」
「バッファローマン…」
「ほら俺が注いでやるからちったあ飲めよ!」
否応なしにグラスに注がれるビール。
バッファローマンは酒癖が悪い。酒乱の気がある。
(飲まないとまた暴れそうだな…)
沙希は枝豆を食べながらちびちびと飲み始めた。一気飲みは無理だ。
しかし普段酒を飲まない彼女が自分の注いだ酒を飲んだことに満足したらしく、バッファローマンは上機嫌で他のメンツに絡みに行った。
「あれえぇ〜……」
唐揚げやサラダを食べているうちに、沙希は身体がポカポカし、身体に力が入らなくなってきたことに気付いた。ちゃぶ台にうつ伏せになる彼女。
(ふわふわするよ…)
心地よい倦怠感に顔がニコニコする。
だんだんと楽しい気分になってきた沙希は、スッと立ち上がる。そのまま彼女はくるりと方向転換をすると、ウルフマンに抱き着いた。
「ぶっ!?」
「はあっ!?」
「ブフッ!?」
「どどど、どうした沙希ちゃん?」
「ごめんなさい、ずっとやってみたかったんです」
胸元に顔を埋められたウルフマンは顔を赤らめて固まった。
「と、年頃の女の子がそんなことしちゃあいけないぞ」
「うぅ〜……だって、甘えたいんだもん」
上目使いで強請られて、今度こそウルフマンは完全に固まった。
構ってもらえないことに気付いた沙希は膨れ面で彼から離れた。
そして傍らのグラスの中身を呷ると、今度はテリーマンの方へ歩を進めた。
「テリーしゃあん構って〜!」
「はいはいレディ」
「ナツ子さんも〜!」
「あはは!分かったよ〜!」
二人にハグされ沙希はご満悦だ。
「ナツ子さんもテリーマンも大好き〜」
「私たちも沙希ちゃんが大好きや!」
「あぁ、そうとも」
「きゃあ〜っ!」
感極まった沙希は二人の頬にそれぞれキスを送った。
「いつもキン肉マン、ミート君共々お世話になってます!本当にありがとうね」
フラフラになりながらそう言うと、沙希は次のターゲットを探しに行った。
「ニーコラーイちゃーんっ!!」
「ふっ。ご使命だぞウォーズ」
「アワワ……」
「どーーんっ!」
「グフッ!?」
「熱烈じゃないか。よかったな」
「あ、危ないぞ沙希さん。怪我したら大変だ」
「ごめんなさ〜い」
腕にコアラのように抱き着いた彼女の背中を支えながら、ウォーズマンは酔っぱらった彼女を宥めた。酔いが回ってきた彼女はバッファローマンほどではないが態度がおおらかに、そして甘えたになってきていた。
ウォーズマンの褐色の肌に、赤く染まった彼女の白い肌が擦り付けられる。アルコールによって高くなった体温が彼に移ったのか。
「顔が赤いぞ?大丈夫か?」
「ロビン!」
揶揄う口調で掛けられた言葉を受けて、ウォーズマンは顔を赤らめた。
「だいじょうぶ?ニコちゃん?」
「ブフーーーーーっ!!」
「だ、大丈夫だ。ただ、その…ちょっと外の空気を吸ってくる」
「そう…戻ってきてね?」
寂しそうな顔をして引き留めた沙希に胸の奥を爆発させそうになりながら、なんとかウォーズマンはその場を離脱した。
(水飲み場で頭冷やそう…)