甘さに吞まれる(4)
「ブロッケンJrしゃん…」ついついと軍服の裾を摘まみ、軽く引っ張る沙希。
いつもは年上だからと、お姉さん風を吹かす彼女からは想像のつかない姿だ。
「なんだよ」
「ちょっとらけ、構ってほしい」
「今ウルフマンと飲み比べしてんだよ。後にしてくれ」
「やぁ〜だぁ〜…」
幼子のようにぐずる沙希。
だが、ブロッケンJrは振り向かない。
彼は嫉妬していた。友人であるアイドル超人に。そして腹も立てていた。べたべたと異性に無防備に触れる沙希に対して。
「じゅにあさぁん…」
「…」
「──ぐすっ…ぅう……っ」
「!?」
嗚咽を溢しながら、沙希は立ち上がった。
ブロッケンJrから返ってくる杜撰な反応から嫌われたと思ったのかもしれない。
「ごめんなさい…」
「あっ、いや…沙希…」
「う、うぇええ…ええ〜〜〜〜んっ!!!」
「あー!ブロッケンが沙希さん泣かしたぁ〜!」
「オイオイ何をしているんだ」
「な、何もしてねぇよ!」
ポロポロと涙を溢しながら外に行こうとする沙希は、ちょうど外から戻ってきたウォーズマンに鉢合わせた。
「どっ、どうした沙希さん!?」
「うわぁぁあーん!…ひっく、ひぅう…」
チリ紙を渡すと豪快に鼻をかんだ彼女は、またフラフラと歩き出す。
近くのベンチに腰掛けたのを確認したウォーズマンは、キン肉ハウスに足を踏み入れた。
「どういうことだ?」
「端的に言うと酔っぱらいの扱いを間違えた」
「詳しく言うとブロッケンJrが酔っぱらった甘えたの沙希に構わなかったことが原因だ」
「なるほど」
そう言うと、ウォーズマンはベアクローを出して笑った。
「待てまてまてまて!?」
「コーホー」
「さてはコイツも酔ってるな!」
「素面でも同じことが起こりそうだが…」
「言ってないで止めろロビン!」
「……分かった」
電光石火。首筋に一撃。
ウォーズマンは倒れ伏し、動作を停止した。
「oh!violence!HAHAHAHAHA!」
「もうテリーったらぁ〜!」
「駄目だ。まともなやつが少ない…」
「誰が奇行士だ!」
「今のお前さんだよ…」
ラーメンマンのツッコミにロビンマスクは高鼾で返した。寝言だったらしい。すごいな。
「早く仲直りしてこい」
「そうだな。"ちょっと"構って来いよ」
「きちんと謝るんじゃぞ。沙希さんは最近皆と会えず寂しがってたからのう。だから今日酔った時構ってちゃんだったんだろう」
「なっ!?」
「では、我々では役不足だろうな」
「あぁ。彼女はブロッケンJrをご所望だったしな」
「ラ、ラーメンマン!?」
「早く行け。変な輩に絡まれるかもしれん」
仲間に背中を押され、ブロッケンJrは外の公園に駆け出した。
しかし、公園のベンチや遊具にもいない彼女。
「どこ行った…!」
辺りを見渡す。
敷地内から出るかと駆け出そうとした瞬間、
「じゅにあさん…?」
「沙希!」
背後から彼女に呼び止められた。
手を拭っていることからお手洗いに行っていたのだろう。心なしかスッキリした表情をしている。ただ、目が赤い。
「あの、えっと、さっきはごめんなさい。もう落ち着いた、です」
「…」
「迷惑かけて、わっ!?」
ブロッケンJrは無言で近づくと沙希を抱き締めた。狼狽える彼女の背中を、彼はぎこちなく、あやすように撫でた。
「さっきは悪かった。せっかく声掛けてくれたのに」
「へ?」
「その、なんだ。あんまりいろんなヤツにベタベタ引っ付くな。男は狼なんだろう?」
(キン肉マンとミートは兄妹のような関係だし、まぁ大丈夫だとは思うが)