劇的に彩って(4)
「私って何が好きだったっけ」
「なまえ…」
「なまえさん、二階で試着ができますゆえ、一緒に選びませんか?」
「すみません…お願いします」
まつさんに案内され市と二人試着に向かった。
「うわぁ…!すごい!」
「綺麗ね…」
「うん!」
「悩んじゃうなー」
「…なまえか?」
「へ?」
三人の内誰でもない声が背後から聞こえてきた。
「誰?」
「ってオイ!」
「なまえ…海賊さんよ」
「海賊…?」
「名字が難しいわ…」
また連想ゲームと化している。
「長曾我部元親だ」
「…アニキさんか!」
「!…おうよっ!」
「久しぶりですね!どうして此処に?」
「今運送屋やってんだ」
「似合う!」
「だろう?まつさん、下に荷物あっから!あと受け取ってくれた利家さんが呼んでたぜ」
「ご苦労様です。犬千代様が…」
「まつー!これはどうすれば…おっと!」
下から不穏な音が…
「なんと!ですが着物がまだ…」
「早く行ったほうがいいんじゃねえか?このあと仕事ねえから此処で見張ってるし」
「いえ見張りではなく、」
「ああ!…選んだら上から着せればいいんだよな?」
「は、はい!良いのですか?」
「あぁ。なまえ、嫌じゃなかったら俺に着物選びと着付け、手伝わせてくれねぇか?」
「え!?」
「これでもセンスあるんだぜ?」
ちょっ、長曾我部さんの厚意に甘えるか…。忙しそうだし。
「お…お願いします」
「おう!じゃあ…ちょっと待ってろよ」
そう言うと彼はなまえの顔をしばらく眺めて、念仏のように色の名前を呟きながら着物を探し始めた。
「市、髪型決めてくるわね…」
「あ、ごめん…行ってらっしゃい」
「ううん‥行ってきます」
暇になった市は下に降りていってしまった。
「これもいいな…お!この桃色もいい…む、紫……」
「あ、アニキさん」
「ぁあっ?!」
「えっ‥とアニキさんは」
「元親だ、それかアニキって呼んでくれねぇか?なんかむずかゆくてよ」
「じゃあ元親さんで」
「おう!ちなみに一応言うが同い年だからな?」
「…あ、はい、それは」
「そ、そうか…」
会話が途切れてしまった。彼も敬語が気になるんだろうか…。
「えと…着物!」
「お!おうっ!?」
「今元親さんが持ってるやつ、着てみたいです!」
「こ、これか!」
「はっ、はい!」
お互いギクシャクしながら着付けへと移った。
「苦しかったら言えよ」
「はい」
白い襦袢を着た後、元親さんの言葉に返事する。
着物の衿を合わせ、紐で縛るのになまえの胴に抱きつく形になる。
「…」
近すぎる距離に、息ができない。
「よし‥と次は」
そう言って顔を上げた元親はなまえと目が合い、動きが止まる。
「なんて顔しやがる…」
「元親さん…?」
「14日、また来る」
「え?あぁ…成人式と同窓会出るんですね」
「俺と、一緒に行かねえか?」
なんて返事したか覚えてない。
最初に来たメンバーと合流して、いつの間にか帰宅していた。だが、ケータイのアドレス帳に新しく元親さんが登録してあったから…そういうことなんだろう。
少し14日が楽しみになった。