劇的に彩って(9)
「ありがとう風魔くん」
「…」
彼も呉服屋梅花で着物レンタルしたらしく、また車に乗せてもらった。
店に着くとクラスメートたちがもう私服に着替えており、幹事の徳川家康くんが声をかけてきた。
「おお風魔!久しぶりだな!…ん?横の彼女は」
「なまえちゃんだよ、徳川の旦那」
「ぉお!なまえ!やっぱり綺麗だな」
「へ!?」
「だよねぇ〜」
「い、いやいやそんな…」
「そうだ!これから同窓会まで自由時間なんだ。よければワシ達と一緒に時間まで暇をつぶさないか?」
「えぇ!?」
どうしよう…。
「…」
「…?」
風魔くんが、振袖の裾を軽く引っ張り何かを訴える。
あ、そうか。
「ごめん徳川くん。着物返して、髪の毛セットして化粧直してたらかなり時間かかるから、他の人と行ったら?」
「だが…」
「道わかんなかったらメールするし…あ、風魔くんがいいなら風魔くんと一緒に行くよ」
勇気を出していいかな?と二人に聞くと、二人とも頷いてくれたのでほっとする。
「じゃあ行くか!」
クラスメイト達が出ていき、二人になった。
「ひぇ〜…」
照れた。
「…」
頭なでられた!
「風魔ー!お前はこっち!」
「なまえさんはこちらに」
「あ、はい」
それぞれ呼ばれ、私は名残惜しいが離れた。後ろで前田くんが痛がる声がしたけど、どうしたんだろう?
「なまえさん」
「あ、まつさん。ありがとうございます」
「言えましたか?」
「まだ、です」
何故だか笑うまつさん。
「大丈夫です。なまえさん、どこかすっきりなさったお顔をしてます」
「…」
「自分のお気持ちに気づきましたか?」
「はい、私」
風魔くんが好き。
「…頑張ります」
「なれば!またまつめがなまえさんを手助けさせていただきます」
「よろしくお願いします」
「はい!」
数十分後。
「お待たせ!」
「…」
「じゃあ、よろしくお願いします」
「…」
まつさんと前田くんに手を振ると、風魔くんに手を引かれて車に乗せられる。
結局時間がかかり、そのまま同窓会へ行くことになってしまった。
「ごめんね…」
「?」
「風魔くんと一緒に、その、いたかったんだけど。時間かかっちゃって」
「…」
「……」
大丈夫だと言うように首が振られる。
「そっか…」
会場へ着くと風魔くんは駐車場に車を回しに行き、私は一人玄関で待っていた。
「…みょうじさん」
「はい?」
振り向くと知らない女子が立っていた。
「覚えてる?」
「いや…ごめん誰だっけ?」
そう言って悩むと女子が笑う。
「私、貴女をいじめてたの」
「……あ〜!」
納得!と手を叩くと、向こうは肩の力を抜く。
「なんか、仲良くなりたかったんだけど…みょうじさんあまり笑わないし…」
「ごめんごめん、人見知り激しくて…いつも遠慮がちって言われる」
「そう!」
何故か意気投合。
「メアド教えてくんない?なんかもっと話したいし…その、謝りたいし」
「もう充分だよ、ありがとう。でも私もメアド欲しい」
アドレス交換して、仲直りすると。
「…どこかのさん、香水してる?」
「え?うん」
「桜?」
距離が近かったから香りがしたらしい。
「…好きな人と初めて会話したのが立派な桜が咲いてるときで」
「…それって風魔くん?」
「ななな何で分かったの!」
「好きなの?」
「は」
「風魔くんが好きなの?」
「…うん。好き」
彼女はそう、と呟くと私の後ろに話しかけた。
「だってさ、風魔くん」
「…はぃ?」
「……」
「後はごゆっくり〜」
じ、状況が…まさか、まさか。
「…聞いた?」
「……」
首は縦に振られた。
「あの…あの……」
「…」
どうしよう。
「なまえ」
「…!?」
い、いま名前…!
私がうろたえると。
「好きだ」
「っ…」
「…覚えていてくれて、嬉しい」
抱き締められ、首筋に彼の顔が埋まる。
桜の香りを確かめるかのように。
「ふ、風魔くん」
「なまえ…」
俺と付き合ってくれないか、と耳元で囁かれる。
「よ…」
「よ?」
「喜んで!」
返事と共に背中に手を回し、なまえと風魔、二人で桜の香りに包まれた。
風魔小太郎編 Fin