劇的に彩って(10)

→青い色合いの着物


「…あお」
「?」
「なまえ…」
「青って、着ても大丈夫ですか?」
「はい」

室内を見回して見つけた色。

「なまえさんのような清楚な方に似合いまするね、この色は」
「…」
「なまえが好きな人が、よく青を着ていたの」
「まぁ!なんといじらしい!」
「いじらしいと言うかなんというか…憧れ?」

ただ見ているだけでよかったんだ。
嫌がらせで顔も上げられなくなるまでは。
それに、見たいと思っても、もう見れないだろう。

「まぁ、自分に踏ん切りつける為というか」

彼が来て、もし会っても、向こうは私なんて覚えてない。

「なまえさん。諦めてしまうのですか?」
「…」
「何もせずに?」
「…」
「…市トイレ借りてくる」

気まずくなったらしく、市は下に下りていってしまった。

「何か…」
「?」
「何かする前に、しようとしたときに」

全部ぐしゃぐしゃにされた。

「白かった部分も、柔らかいところも」
「なまえさん…」
「我慢して何もしないことが、平和に過ごす手段だったんです」

でも、
「それ、すげー疲れるんですよ」

溜め息混じりに吐き出して、誤魔化す。
疲れるだけではなく。吐き出し場所のない怒りが、体をぐるぐる循環するんだ。

「人はみな、事を起こせば疲れるものです。満たされるには、自分から満足出来るよう事を起こさねばいけませぬ」

苛立つのは自らの不甲斐なさからなのでは?と問われる。

「…たぶん」
「自分に正直に生きるのも、女子の務めです」
「正直に…」
「なまえさんが、その方に思いを伝えられるようにお手伝いさせていただきますゆえ。我慢は体に毒ですよ?」
「伝えてもいいのかな…」
「ここに、咎める者はおりませぬ」
「…はい!」
「一世一代の戦に相応しい装いにせねば!」
「よろしくお願いします!」

着物などを全て決めて下に下りると、市とかすがが待っていたので謝り、全員の準備が終わるのを待って帰宅した。

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