劇的に彩って(11)
「準備は整いましたね?」
「はい…」
「しゃんとなさいませ!まつめが腕を振るい、あとはなまえさんが覚悟を決めるだけでございます」
「なんか緊張してきた…」
鏡の中にいる自分は別人のようだ。
「好きな方の心臓を撃ち抜くくらいの勢いで行きなさい!さぁ!」
「えぇ!?あ、行ってきます!」
肩に手をかけられ、店の入り口に押されてしまい、まつさんはその後仕事に戻っていった。
「…」
友人二人は先にもう会場へ行くことになってて、自分は一人。心細いけど行かないと。
屋根の下から一歩踏み出すと、誰かから呼び止められた。
「みょうじ」
「…?」
振り向くと、
「私を覚えていないのか」
「覚えてる。久しぶりだね、石田くん」
特徴的な前髪に救われる。
「これから成人式?」
「あぁ、お前もか」
「うん。あ、空いてるタクシー」
その声に素早く反応した石田が勢いよく手を挙げ、タクシーは二人の前で止まった。
「あ、よかったら一緒に行かない?」
「……刑部と待ち合わせしている」
「そうか、ごめん」
「気にするな。私がしたくてしたことだ」
早く乗れ、と彼に言われ慣れない動きでタクシーに乗る。
「…みょうじ」
「何?」
「……今日の貴様は、美しい」
「へ!?」
「胸を張っていろ。他の輩に負けるなど、私が許さない」
なんとかなまえが頷けば彼も頷く。
そしてタクシーは走り出した。
会場に着いたなまえは、かすがと市に合流するため探し回る。
しかし周りは人でごった返し、二人は見つからない。それに鼻緒が食い込み、足がどんどん痛くなってきた。
「いててて……はぁ、どこだろう…」
「誰がだ?」
「それ…は!?」
振り返るとそこには。
「よぉ、みょうじ」
「こ、こんにちは…」
いきなりボス来たー!
「……どこかの?Ah〜、俺の名前覚えて」
「お、覚えてます!だ…伊達くんだよね?」
「That's right!久しぶりだな!」
「うん…久しぶり。あ、会えて嬉しいよ!」
「…っ、俺もだ!」
何故か握手。
「そういや誰とはぐれたんだ?」
「かすがと市、待ち合わせしてたんだけど…どうしよう」
「もう式始まるしな…先に席に着いてるかもしれないぜ?」
「かもね…あ!」
「どうした?」
誘うなら、今しか無い。
「だ、伊達くん」
「おぅ」
言わなくちゃ。
「よければ、一緒に…っ」
「…!」
「はーいそこの方々、止まらずに進んでくださーい」
「うぁ、すみません!」
「…」
うわぁ言えなかった…!
「…なまえ」
「!?」
な、ちょ!っと混乱していると。
「同じとこ座ろうぜ?」
「…あぁ、席もう無いもんね」
「……この際なんでもいいか」
「?何か言った?」
「いや、急げるか?」
「頑張ります」
席にたどり着くとちょうど二人分空いていたため、そのまま座り式に参加した。
「内容、退屈だったな」
「なんか…期待はずれ?」
「あぁ」
式が終わり、会場の外で喋る二人。
「今更だが、なまえって呼んでいいか?」
「え?…どうぞどうぞ」
今日が最後かもしれないし。
「なまえは同窓会来るんだよな?」
「え?強制参加じゃないの?」
「いや、予定あるやつは来ねぇけど」
「そうなんだ…」
ならなんで勝手に参加になってたんだ?
「予定、あるのか?」
「ないよ」
「そうか!同窓会は俺の別荘地でやるんだ。めかし込んでこいよ?You see?」
「え゛、ドレスコード?」
「あぁ、…あんまゴテゴテしたのは無しだぜ?」
「買いに行かないと…」
「期待してる」
「ありがと、政宗くん。でもその前に着物レンタルだからお店に返しにいかないと」
服買いに行く時間があるかどうか…。
「…!このあと同窓会まで自由行動だから大丈夫だ。不安なら、そうだな」
そこまで言うとケータイを取り出す伊達。
「俺と、小十郎の番号を教えておく」
「えぇええっ!?」
テキパキとお互いの番号を交換し終え、
「連絡くれ。迎えにいくから」
「う、ん」
気が付けば店に戻っていた。
「という訳で」
「ドレスか…」
「市…いいお店知ってる」
「私…一度帰らないと」
「毎日手入れしないからだ!」
「返す言葉もない」
しょうがないのでなまえは一度帰宅し、呉服屋梅花に戻って化粧と髪と背中の毛などを手入れしてくることになった。
「すいません」
「いいえ!最後まで責任を持ってやらせていただきます!」
「心強い!」