劇的に彩って(20)
「完全に別人…」
「元々化粧映えする顔だったみたいだねみょうじちゃんは」
前田くんにメイクされて鏡を見たら知らない人がいた。
褒められて照れくさいが
「なんか、怖いな」
「え?」
「だって、こんなに綺麗にしてもらって…嬉しいけど、かすがや市は今日彼氏作る勢いで行けって言うし…」
周りに流されるばかり。
「化粧して、綺麗になって、彼氏を作る?…それって顔だけ?…どうすればいいか分かんない」
アイツ等みたいに思われたくない。
それに自分なんか彼氏が出来るわけがない。
「なまえ」
「…!?」
「どう?ドキドキした?」
「…びびった」
「そうか…嫌じゃない?」
「う、うん」
「じゃあなまえちゃん。かすがちゃんやお市ちゃんに名前呼ばれるのは?」
「え?う、嬉しいけど」
質問の意図が分からず混乱するなまえ。
「まぁ、それと似たような感じかな」
「どういうこと?」
「なまえちゃんが話して、『あ!この人に名前を呼ばれるとドキドキする、嬉しい!』って感じる人と仲良くすればいいんじゃないってことだよ」
気になる人とかいないの?と聞かれ。
「…いる」
ふと、思い浮かんできた顔。
「なら、そいつと少しでいいから会話してみな!話はそれから!」
「わ、わかっ…た」
そう返事すると何回も頷いて肩をたたかれる。
「気をつけてね」
「ありがとう、け…慶次くん」
「!」
なまえは微笑みながら礼を言い二階で振袖に着替え、親友二人と店から出ていった。
「あれは、ヤバいって…」
少しなまえが気になっている男を羨ましくなる慶次だった。
彼女達が店の外に出ると。
「あ…」
「お!やっとき…た」
「待たせたな」
「いえ、某等も今来たところでござる」
「じゃあ…今日はよろしくね?」
「「…いや誰?!」」
キョトンとする面々。
「失礼した!某、高校の同級生の真田幸村と申す!お久しぶりでござる!」
「あ、ご丁寧にどうも」
「誰とは失礼な佐助!なまえだ、みょうじなまえ」
「え、えぇぇ!?」
驚きで声も出ないのか、口を半開きにしたまま指差す佐助くん。
「えっ、と…今日はよ、よろしくお願いします。佐助、くん」
「!!」
「見とれてないでさっさと運転し・ろ!」
かすががボカリと頭を殴り、我に帰った佐助は、みんなを車に乗るよう促すと会場に向けて発車した。
「なまえ、大丈夫か」
「…」
「無理みたいね…」
会場近くの駐車場に着き、車が止まるとぐったりしている彼女。
「なまえ殿は車に酔いやすい体質でござるか?」
「あぁ、毎回これだ」
不快感に耐えているがすぐ動けそうにない。
「ごめん、みんな…先に行ってて?」
席を取らないとみんなで固まって座れなくなる。
私は、一人でもいい。
「具合よくなったらすぐ行くから」
「わかった。座席の場所はメールする」
「うん…」
同乗者が会場に向かう後ろ姿を見ていたら、いつの間にかなまえは眠っていた。
「よっ…と」
「…ぅ」
「っ!…危ない危ない」
浮き沈みする意識に柔らかな刺激が与えられる。
温かなものがななまえの頬を慈しむかのように撫でる。
「……なまえちゃん。俺は、なまえちゃんのこと」
「…!ぁあ!?」
「うわぁっ!!?」
優しい感触に頬を寄せ擦り付けるところで目が覚めた。がばり、と起き上がろうとすると。
「〜〜っ!?」
目の前に顔。
「っぁ、さす、なん?えっ?」
「い、いやぁ、車の鍵閉めるのに残ってたんだけど…なまえちゃんすぐ寝ちゃったから、起こす係ね俺様」
「あ…ごめんなさい!」
「そんなの気にしないの。それより具合は?10分くらいしか寝てないけど…どう?」
「あ…大丈夫みたいです」
「よかった〜、じゃあ行こうか。あ、なまえちゃんって呼んでいい?」
とくり。
「っ!?」
「…ダメ?」
「うぁ…いい、よ。私も名前、呼びたいし」
「…っじゃあ、行こう。なまえちゃん」
「う、うん」
二人は会場に歩き、取ってもらっていた席に座り式に参加した。
しかしなまえは自分の胸の高鳴りに翻弄され、式典の内容がほとんど入ってこなかった。