劇的に彩って(21)

呉服屋梅花にて。

「まつさんただいま…」
「お帰りなさいませ!」
「…」
「なまえさんの顔色が真っ青!」

椅子に座らされたなまえは息を吐く。

「すみません…」
「いえ…どうかなさいました?」
「えっと、ちょっと前田くんに話が」
「慶次ー!こちらに来なさい!」
「はいよぉっ!」

大声で呼ばれ、店内の視線が刺さる。

「どうしたんだい?…あ」

なまえの顔を見ると感づいたのか笑顔になる。

「まつ姉ちゃんちょっとごめんよ!」

慶次はなまえの手を掴むと市も呼んで二階に上がる。

「どうしたのなまえ?」
「なまえちゃん…どうだった?」
「あのね…」

市に簡単に説明してから自分が佐助と会話して思ったことを話した。

「佐助くんに名前呼ばれると、なんかドキドキして、胸がきゅってなる感じが…」
「は、春が来たー!!」
「来たわね…」
「恋だぁー!」
「恋ね…」

喜ぶ二人の声をBGMに、先程の出来事を振り返る。
具合悪くて寝ちゃってたら側にいてくれて…心配してくれて。柔らかい刺激…?

「あれ?」
「どうしたの…?」
「気のせいかな‥」

前にも同じことがあった気がする。

「でも、佐助くんチャラいのかな…私車の中で起きたら、あ…頭撫でられてた」
「「!?!」」

いろんな女の子にやってるのかな…となまえが呟くと二人が一斉に否定する。と同時に幸村が入ってきた。

「いや!佐助は親しい者以外の人と距離を置き接する故!」
「そうか〜…いつから居たのか分かんないけどあんがとな幸村!でも、いきなり扉開けてなまえちゃんやお市ちゃんが着替えてたらどうすんのさ?」

ニヤニヤして慶次が言うと、

「は、破廉恥でござるーーっ!!」
「あ…」

大声で叫び脱兎のごとく出て行く幸村。

「何しに来たのかしらね…?」
「さぁ?」
「それより!なまえちゃん!告白!どうすんのさ!」
「こ、告白…!」

考えていなかった、とぼやけば凄い顔をされた。

「え…」
「…」
「言ったほうがいいんじゃないかなぁ」
「でも…」



今気持ちに気づいたばかりなのに。

「人が人を好きになる時間なんて誰一人として違うもんさ。…それに」
「それに?」

そう言うと前田くんはこちらを見て少し笑う。

「好きな人に、好きだって言うのはおかしいことじゃないからね」
「!」
「後はなまえちゃんが決めな?応援してるからさっ!」
「市も…応援するわ」
「…」

言わないよりはいいのかな。どうせふられたら会うこともないだろうし。

「言わずに後悔するより、いいかな…」
「!」
「ダメ元で告、白…してみる」
「ぉおおおおっ!!」

歓声をあげ騒ぐ慶次くんはあまりにもうるさかったらしく、下りた後まつさんに怒られていた。

「あれ…?」

一階に下りると真田くんと佐助くんがいない。探していると今まで二人と話していたかすがが教えてくれた。

「あいつ等は伊達の別荘に同窓会の準備の手伝いだ」
「へー…別荘!?」
「あれ、なまえちゃん知らなかったっけ?」
「うん。……美味しい物あるかなぁ」

と言うと。

「なまえは…他の子と違うから」
「はははっ!そうみたいだね」
「え、馬鹿にされてる?」
「いや褒めている」
「そう…?」

釈然としないが、だんだん店内に戻ってきた客が増え始めたので三人は着替える。
それから同窓会まで時間があるので、どこかでぶらつくということになった。

「よかったら前田くんも行かない?」
「え!なまえちゃんが誘ってくれるなんて!!…俺なんでまだ仕事残ってるんだろう」
「そうやって喋っているからです!」
「げ!まつ姉ちゃん」
「まだ仕事は残ってます!なまえさん、申し訳ありませんが今は…」
「忙しいですもんね。こちらこそすみません。さっき相談に乗ってくれたので、お礼をしたかったんです。ありがとう、慶次くん」
「い、いやぁお礼なんて照れるなぁ!……頑張ってねなまえちゃん」
「うん。じゃあ今日はありがとうございました」

おじぎをして背中に声援を受けながら、私は市とかすがと店外に出た。

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