流るるままに(3)
そしてとうとう謁見。

「うわぁーー緊張する〜〜」

着物は白の肌着に浅葱色の小袖。
小さな花の模様がかわいく思える。が、しずしず歩かないといけないので移動に時間がかかる。
(早く終わらせてぇ〜)

「客人をお連れしました」
「通せ」
「はい(頑張ってくださいませ)」

口パクで言われ少し元気が出た。

「(行ってきます)失礼します」

一言告げ、入室した。
敷居を踏まないよう、畳の目を踏まないよう…と考えながら自然な動きで与えられた座布団めがけて歩く。

(目線を低く…で、上客を敬う)

やっと座布団に到着し、手前で座り膝前で人差し指を合わせお辞儀する。

「はじめまして、里美と申します。本日は城にお招きいただき、恐悦至極に存じます」
「あぁ……よくぞ参った。顔をあげて座ってくれ」
「では、失礼します」

顔をあげて、座布団に膝から座った。
背筋を伸ばし輝宗様のいる前を見ると、目が合う。…あ、小十郎さんもいる。
ほんの少しリラックスした里美だった。

「ここにいる里美は、昨日刺客に襲われ命の危機にあった梵天丸を守り、無事小十郎のもとまで送り届けてくれた勇気ある女人だ。…改めて礼を言う、ありがとう里美」
「いえ……」

改めて言われ照れた私は視線を落とし座布団に意識を集中した。

(…ああ早く終われ早く終われ〜)

「よって梵天丸の命の恩人であるこの者を、暫く客人としてこの城に住まわせようと思う…異論はあるか?」
「……」
(息が詰まりそうだ)

緊張がピークに達しようとしたとき。

「殿。無礼を承知で申しあげますが、このか弱そうな女子にそのようなことが可能でしょうか?」
「そうです!」
「どこぞの間者ではないか!?」

口々に罵詈雑言が部屋中に飛び交う。
(大丈夫。自分の悪口を流すのなんて、もう慣れた)

「私が検分し、白と判断した。それでも不服と申すか」
「いやしかし…!」
「…」
(やっぱりね)

想像通り面倒くさいことになった。
ぼーっと虚ろな目でその光景を眺める里美。
そんな中聞こえた
「殿の目も曇られましたな…」の言葉。

「!!」
ぐりんっ!

その言葉を認識した瞬間。里美は声の主を探すため、座布団に座ったまま180°回転した。

「なっ…!」
「里美殿!?」

驚いた輝宗様と小十郎の声を一旦無視。

「なっ…なんだこやつ!」
「貴様ぁあ!殿にし、尻を向けるなど…無礼者め!!」

無視。

「そこの…髭のご立派なお武家様」
「なんだ小娘」

すー…はぁー…と息を吐き、口を開いた。

「今お殿様の悪口を言いましたね」
「──聞き間違いではないか?」
「そうでしょうか?その立派な髭の色のように真っ黒な腹積もりの声だったので、間違いないかと」

断言である。

「きっさまぁぁあ!!礼儀を知らんようだな!女子と優しくしておればいい気になりおって!」
「私はこの城に来てからお殿様と、こ…片倉様と、梵天丸くんと、先程の女中さん以外に優しくしてもらった覚えはありません。気のせいでは?」

鼻で笑いながら指折り数え喋る里美。

「表に出ろ女狐!たたっ斬って化けの皮を剥いでやる!」
「ボルテージ上がってますね〜……いいでしょうか、輝宗様?」

(勿論、やる気満々ですがね?)

指の関節をバキバキ鳴らしながら答える。
好きで目立っているわけではないが、見過ごせなかった。
こうして、ヒゲだるまと戦うことになった里美だった。
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