流るるままに(6)
「体力が…」
続けざまの攻撃が掠る。全身筋肉痛の自分の体がバテてきたのを感じ、一度距離を取ろうとしたが。
五、六人が槍と刀を手に周りを囲みながら突っ込んできた。隙間は無く避けられそうにない。
(寸止め……な訳ないな)
「さとみーーー!!」
後ろへ一歩。ニ歩。
次の瞬間里美は消えた。
「!?」
目の前の敵が消えうろたえる相手の家臣団達。見ていた梵天丸たちも驚き、護衛は辺りを警戒し探す。
すると。
「名前を…考えてなかったな」
そんな呟きと共に里美の周りを囲んでいた武士達が青みがかった、勿忘草色の風に包まれる。
風は彼等を丸く囲み身動きを取れなくさせた。
内側の様子が見れるそれは、中の人々の驚愕の表情を周りに示す。
そして上から速度を落としながら里美が下りてくる。
「名前を付けるなら…【
青癒鎧鱗】ってとこかな」
へらり。
「さとみ!さとみーー!!」
きゃあきゃあと叫ぶ梵天丸に片手を上げ返事し、また構える。
残りはあと八人。
あまり体力も残ってないし、何より真剣が怖い。
相手が動揺している今が最初で最後のチャンスだろう。
ばらまかれた苦無を躱し飛び上がった時に見つけた小枝を拾い、指に挟む。「さとみ!あれをやるのか!」
「あれ…とは?見たことがおありで?」
「助けてもらったときにな!かっこよかったんだぞ!」
なんて会話が聞こえ、頬が緩む。
そして。
(ベストポジション…!)
前回と同じ編隊。
梵天丸と小十郎、輝宗様方の視界に入り相手との間合いも気合いも充分。
「Let's Party!!」
ゲームで"彼"は跳ばないが、吼えて一回目の跳躍。
里美は小さく前へ。風の刃で間合いの伸びた小枝に驚いた一人が、後列にぶつかり息が合わなくなる。
二回目。大きく空に向かうように上へ。
奥歯をかみしめて、振り下ろした。
地面を揺らし、土煙がもうもうと舞う。
「おい!どうなった!」
「煙で何も…っ」
「なんとかしろぉ!」
せき込みながら会話しているがどこに誰がいるか分からず相手の顔は見えず、混乱状態に。
騒いでいると突然土煙が晴れ始め視界が開けるとそこには。
「!?」
「なんと…!」
ザワザワ動揺がその場に広がる。
「さとみ!おーいっ!!」
土煙が晴れた先に立つのはただ一人。
嬉しそうに手を振り呼ぶ梵天丸の声に反応し振り向くのは女子。
「癖になるなよ…?」
不敵に笑う姿に梵天丸はさらに興奮。顔を赤らめてまた名を呼んだ。
そんな梵天丸の可愛らしさ特別恩賞と脳内でシャウトしつつ歩き出そうとするも、彼女の右足が動かない。
何だと下を見ると。
「いい根性してますねお武家様…」
武士の意地なのかなんなのか。とにかく。
「輝宗様!」
「なんだ里美殿」
「参りました!!」
「何?!」
「うわっ」
周りからの怒号のように疑問不満が噴出。
「理由を聞かせてくれ」
「はい。私の決めた勝利条件は[自らの血を流さず触れられずに一撃で戦闘不能にすること]です。私の足を掴んでいるお武家様は、朝に輝宗様を侮辱したと私が問いつめた方です。私が貶されるのは構いませんが、輝宗様は恩人。ただ発言を撤回し輝宗様に謝ってくださればそれでいいんです」
「ふむ……」
「私は武家の出ではないので、勝敗はどうでもいいです。死ぬのは嫌ですが殺すのも嫌でしたので、最悪逃げればいいと考えていましたし」
「だから一撃で戦闘不能……しかし…」
勝負には白と黒がある。
「私は勘違いしていたんです」
「?」
「ただ彼が輝宗様に対して暴言を吐いただけなら、私はここで勝ちを言い渡されることを待っていたでしょう」
「……」
「得体の知れない者が城主に近づいた場合、城主に意見してでも目を覚まさせる。それが城の者、城下の民全てを守ることに繋がる。このお武家様は」
自分が憎まれ役になろうとも、伊達家を守ろうとした。
「最後の技は、私の出せる気合いが全て入ったもの。婆裟羅者の一撃を受けなおも仕える方のため泥にまみれたこのお武家様の、武士としての忠義に。私は負けました」
数々の無礼。申し訳ありませんでした。
里美はそう言うと足を掴んだ手を外し、気絶したままの伊達家の家臣に土下座した。
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