流るるままに(7)
その後、目覚めたお武家様に輝宗様が事のあらましを説明すると少しまたざわついたものの、両者大健闘の末引き分けということになった。
「お武家様、あの」
「もういい。輝宗様からの説明で納得した」
「はぁ…そうですか」
「とにかくだ。まぁ、輝宗様が認め、家臣団と五分の勝負をしたお主を…歓迎しよう」
「!」
「梵天丸様を守ることはあるな」
「は、はい!」
「ではこれにて失礼する」
「あ、ありがとうございます!!」
お武家様を見送りなんとか山場を乗り切った里美は、解散の一言でやっと力を抜いた。
「つかれた…」
「よくぞあそこまで頑張ったな」
「すごかったなさとみ!」
「怪我はないか」
「ありがとうございます。いや、刀で切りかかられるの初めてだったんで怖かったです。あ、怪我はないです」
(あー死ぬかと思った)
「梵天丸君、応援聞こえたよ…ありがとう」
「……へへっ」
「小十郎さんに自慢してたでしょ〜」
「だってな!」
梵天丸君達と話してる最中に。
「そこの…里美とやら」
「!」
「…義」
「はい?」
梵天丸の母親、義姫が話しかけてきた。
「お初にお目にかかる。伊達輝宗が妻、義と申す。本日は大変良いものを見せてもらった」
「喜んでいただけてよかったです」
「竺丸、こちらへ」
母親の側に寄るとこちらを見つめる男の子。
「はじめまして!竺丸と申す!」
「ご丁寧にありがとうございます。里美と申します。本日の試合を母君とご覧になった感想をお聞きしても?」
「最初はなんて無謀かと思っていたが、あの短い間に家臣団をよく倒したなと最後には目が釘づけだった!」
「ふふっ、そうですか」
「それだけ今日の働きが価値ある物ということ。里美殿。伊達の客人としてゆるりと過ごされよ。時間があれば竺丸とも話し相手になってはくれまいか?」
「はい。機会がございましたら」
「そうか…では」
里美が深々とお辞儀すると義姫は竺丸の手を引いて歩き去っていった。
その後ろ姿を寂しそうに見つめていた梵天丸。そしてそれを小十郎と輝宗様が心配そうに見つめる。
「手、洗ってきます」
里美はそう言うと走って目線の先にある井戸に向かった。
すぐ側に控えていた女中に手ぬぐいをもらい手を拭くとダッシュで戻ってきた。
「梵天丸君」
「…」
「おーい」
「…」
「ぶぅぉおーん」
「…っ」
「あ、笑った」
「…笑ってない」
「ほんと?」
「ほんとう…」
「じゃあ、これは!」
そう言うが早いか、いきなり里美は梵天丸の脇腹をくすぐった。
「うわぁ!…ははっ」
「これでもか!これでもか!」
「わ、笑って…はははは!ひぁっ!くくっ」
「まいった?」
「ふっ…ふふっ!…ま」
「ま?…こしょこしょ」
「きゃーっまいったぁ!」
「よし!これくらいにしといてやろう」
「ひぁ…くすぐったかった」
とりあえず元気になったようなので離れる。
「まだまだだな梵天丸君は!」
「むぅ!」
「何がだ…」
「あ」
「?」
小十郎さんはくすぐったら反応するかな?
「梵天丸君!共闘だ!」
「きょうとう?」
「一緒に小十郎さんにくすぐり攻撃だ!」
「な!?」
「行くぞ!」
「「おー!」」
「輝宗様まで?!」
ということで小十郎にトライアングルアタックをし始める三人。
最初どうすればいいか分からず戸惑っていた小十郎だが、的を里美に絞りだし追い払う。
「ふっ…いい加減にしろ!」
「今笑っ…あ゛」
「「「あ゛っ!!」」」
ドボーン
軽く押された時に躓き、側にあった池に落ちた里美。
「小十郎。客人を池に突き落とすなど…!何をしているのですか!?」
「あ、姉上これは」
「輝宗様も!いい大人が!」
「はい…」
「さとみ…ごめんな」
「大丈夫だよ梵天丸君。こっちこそ着物汚してごめんね」
「うん」
「里美様!!」
「はっ、はい!」
「年頃の女子が猿のように走り回ってはいけません!着物もはだけてはしたない!」
「さ、さる…すいません」
「まったく!もっとお淑やかに慎ましく…」
「…」
「聞いてますか!?」
「はい…はっくしゅ!」
正式に客人として認められてから始めてしたことが正座な里美。
こうして喜多の説教をBGMに伊達家家中親善試合は幕を閉じたのだった。
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