天津風(2)
梵天丸の部屋にお邪魔します、と入る里美。
「遅れてごめんね。寝坊しちゃったんだ」
「昨日頑張ってたもんな!今朝餉温めて持って来てもらうとこだから待ってろよ!」
「え!ありがとう梵天丸くん!」
お腹空いてたんだーと言った途端腹の虫が鳴る。
二人分。
「え?もしかして待っててくれたの?」
「……一緒に食べたくて」
「遅れてごめんね、梵天丸くん」
「いいんだ。おれが好きで待ってたんだから」
「でも」
グーーッ
「…」
「…ふふっ」
二人でくすくす笑っていると女中が料理を運んで来て、その後ろから小十郎が部屋に入ってきた。
「あ、ありがとうございます。小十郎さん、すみません。先に行ってしまって」
「いや…」
「さとみ?小十郎?」
「ん?あ、ご飯来たから食べようか!」
「うん!」
向かい合わせで座り、いただきますと手を合わせればさっそく味噌汁に箸を運び一口。
滋味深い味わいが口の中に広がる。小鉢の野菜も瑞々しく、野菜本来の甘味に味噌のコクが何とも言えない。
(とても美味しい)
黙々と食べ進み、あっという間に完食して、ごちそうさまでしたと手を合わせる。
焦った梵天丸が急いで口に箸を運ぶのを見て止める。「そんなに急がなくても大丈夫だよ。梵天丸くん待つし。よく噛んで食べないと大きくなれないよ?」
「わかった」
またむぐむぐと落ち着いて食べる姿を見て笑顔になる。
「今日のご飯、おいしいよね。今度作り方教えてもらおうかな」
「おれもこれ好きだ!いっぱい食べれる」
「えらいね〜好き嫌い無いの?」
「…ある」
「あ〜、まぁそのうち食べれるようになるよ。私もいつの間にか嫌いなもの食べれるようになったし」
「そうか!」
「うん」
話していると梵天丸が食べ終えた。
「ごちそうさま!さとみ!今日は一緒に遊ぼう!」
「梵天丸様。里美殿はこれから兵達の鍛錬指導に行かれます」
「なんか誘われて…指導なんて出来ないのにね」
「えぇー!!なら一緒に遊ぼう?」
「「梵天丸くん(様)、勉強(勉学)は?」」
そう言われた梵天丸は顔にショック!と書いてある。
「遊びも私もいなくならないから、ちゃんとお勉強して?それからなら梵天丸くんが私を貸し切り状態に出来る」
「…さとみ」
「待ってるから。友達が遊びに来てくれるのを」
「…」
「わかった!逃げるなよ!」
「はぁーい」
そして里美は部屋から出ていった。
スパン!
「!」
「さとみ?」
「ここから右左どっちに行けばいいんでしたっけ?」
「右だよ!」
「ありがとう梵天丸くん。じゃあまた後でね」
里美は梵天丸と、小十郎を見てそう言うと今度こそ部屋から出て行った。
「……」
「梵天丸様?」
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