いものうすぎりとあめじけん(2)
「失礼します。里美殿をお連れしました」
「入ってくれ」
「失礼します」
小十郎と梵天丸の後に続き、一礼して入室する。
(あれだけ大騒ぎしたら…あれ?)
通されたのは輝宗様の私室。
部下もいない。
「一体どうしたのだ里美殿。とりあえず座りたまえ」
「あ…はい」
言われた通り座布団に座ると三人が一斉にため息をついた。仲良いな。
「どうした、と言われても」
視線を逸らして頬を掻く里美。
(正直に言ったらイっちゃってる人に!?言えるか馬鹿ぁぁあああああああ!!そんなホイホイ気軽に言えたら苦労しないんだよ都合良く行くなら誰も苛められたりしないんだよふざけんなマジ無理ほんとこんなことならやっぱり来るんじゃ)
「さとみ?」
「──梵天丸君」
「お菓子、食べよう?」
「は」
「梵天丸様!…勿論小十郎も良いですね?」
「ずるいぞ梵天!父も食すぅっ!」
「輝宗様……童じゃないんですから」
思考がついて来て三人を見る。三人とも鞄から見える菓子袋を見ている。
食べる気満々ですね。
「あ……開けます?」
「というより、これは袋なのか?」
「紐が無いが…」
「えっと、くっついてるんです。熱で溶接というか」
説明しながらよっと袋を引っ張り開けると驚く三人。
(中身飛び散らなくてよかった…)
ポテチの袋と中身をまじまじ見つめる三人を尻目にポテチを一つ摘み、食べた。
よかった。どうやら湿気っていないみたいだ。
「里美殿。それは何だ?」
「芋の薄く切ったものを油で揚げたものです。ちなみにのりしお味です」
「「「のりしお味…」」」
バリボリ3枚、4枚と里美が食べていると輝宗様が食べようとする。
が、その前に小十郎が。そして更にその前に梵天丸が食べてしまう。それに焦って屋根裏から監視していた忍も降りてきてしまった。
「梵天っ!」
「ち、父上……美味です!」
「「「え」」」
「梵天丸君が気に入ってくれてよかった。まだまだあるから食べていいよ。あ、皆さんも…忍さんもよかったらどうぞ。一応、毒見しなきゃいけないでしょうし」
苦笑いしながら言うと輝宗様も苦笑い。小十郎は額に手を当て、忍は一人で狼狽えていた。
バリバリムシャムシャと室内に響く音。しばらく経って里美が口を開いた。
「えっと……何も聞かないんですか?」
「おお!そうだな!」
指を舐めた後懐紙で拭いた輝宗様が向き直った。
「珍しい菓子だな」
「…はい」
「他にはどんな菓子があるんだ?」
……は?
「荷物を検分した時には使い道が分からなかったが、菓子だったのか」
「あの」
「凝った物ではなさそうだ…作り方が分かれば」
「えっと」
「あ、まだ袋があるぞ!なんだこれぇ?」
「梵天丸様申し訳ありませぬ。小十郎には分かりかねます」
「聞かんかぁあああ!!」
大声が部屋中に響きぴたりと動きを止めた四人。一人息を荒くなっている里美。
「訳わからんものをホイホイ口に入れるなって教えてもらってないのか!」
「さとみ〜、これはなんだ?」
「それは飴だ…ってオイ」
「つばき!」
「はっ、毒味致します」
「椿?」
知らない名前の主は先程の忍だった。
ビニールで小分けにされた飴を受け取るとなんとか包みを開け、口に含んだ。
「!」
「ど、どうだ?椿、大丈夫か?」
震え、若干悶えているような体勢の忍。
数瞬後。
「大変──美味でございました。毒は含まれておりませぬ」
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