いものうすぎりとあめじけん(3)

喜色の滲んだ声に嬉しくなる。
室内の里美を含めた全員が、一斉に手を伸ばして食べ始めた。
すると突然、今まで笑みを浮かべていた梵天丸が言った。

「これで、この菓子はもう得体の知れないものじゃなくて、さとみのくれた菓子だな!」
「え」

菓子を摘む手が止まる。

「いや梵天丸君。それはそうだけど、あげた人が良い人じゃなかったら、得体の知れないままだよ」
「えっ!?」

マジで!?と顔に書いてある梵天丸君。

(純粋だなぁ…)

唸り考え込み始めた梵天丸に苦笑。
自分のために、友人が考え込んでくれている。

(もう、いいや)

どんな結果でも。

「この菓子は、未来のものだよ」
「みらい?」
「うん。先の世のお菓子ってこと」
「先の世とは、誠か?」
「はい。…すみません、突拍子も無いこと言って」

深々と頭を下げる。
(あぁ怖い)

「…面を上げよ」

ぶっちゃけ言うと顔を上げたくない。
しかし不安に握り締めた手を、上から包まれたために里美はハッと顔を上げた。
包んでいたのは小さな手だった。

「梵天丸君…」
「おれ、信じるよ。さとみのこと」
「…」

(信じなくて良いよ。どうせ、みんな私をゴミのように捨てるんだから)

人の心は離れるもの。
里美はただ困ったような笑みを浮かべるだけだった。
- 29 -
*前次#
トップページへ