腹の筋が
夜の帳が降り、梵天丸くんのお願い(と言う名のうるうる目線攻撃)のため、奥州伊達家の屋敷に泊まることとなった里美。
「なんか……すみません。いろいろと」
「里美殿が気にすることなどない。こちらから頼んだこと。夕餉は口に合うかな?」
「……ありがとうございます。はい、美味しいです」
口の中の食べ物を飲み込んでから会話する。自分の家ではないから気を使う。
(美味いと言ったけど緊張で味が分からない)
礼儀も分からないからとりあえずよく噛んでから飲み込み、満遍なく箸を運び食べ終えた。
「さて、私は政務があるので失礼する」
「あ、そうですか……お忙しいのにすみません。というか勘違いしてました」
「勘違い?」
「てっきり輝宗様も一緒に寝るもんだと」
「「!?」」
「んな訳ねえだろうが!何言ってやがる!」
「ぇ、あの…、すみません。私が幼い頃は親が添い寝してくれたので…梵天丸くんはお父さんと一緒に寝ないの?」
「…」
「というより寝たくないの?」
「「……」」(ちょっと気になる二人)
「………父上はお忙しいから」
「じゃあ、忙しくなかったら寝たい?」
数秒の沈黙。そして無言で縦に振られた首。
「梵天!一緒に寝よう!」
いつの間にか自分の脇を通り過ぎて梵天丸に抱擁する輝宗様。
政務なんか後回しじゃあー!と叫んで頬擦りしている。それを呆然と眺める小十郎と里美。
「布団、敷きますか」
「…あぁ」
ドーン
「さとみ!一緒に寝よう!」
「はーい」
「「…」」
右側(障子側)
輝宗様
梵天丸
里美
小十郎
左側(壁側)
という配置なのだが。
普通男女が同じ布団に入ること(同衾)は夫婦のすることであって…なのにこの気軽さ?武家の元服した男とこれから成人になる傅役がいるのに、軽い応対のせいで里美の将来が心配になる二人。
「…父上?小十郎?」
「おぉ、すまぬ梵天。今行く」
「……失礼致します」
城主とそのご子息、恩人だが怪しい女と寝所を共にすることに胃が痛くなる小十郎。本来なら不敬で切腹物だ。
「おやすみなさい父上!小十郎!さとみ!」
「おやすみなさいませ/おやすみ×2」
(枕が高い…!)
(胃が痛い…!)
- 34 -*前次#トップページへ