望雪の日(1)
「はーしょい!へっくち!えっしゅう!」
冬至が過ぎ、日の昇りが遅くなった朝方の暗闇に響いたくしゃみ。
身も凍るような寒さに目を覚ます部屋の住人は自分の肩が布団からはみ出ていたのを見て慌ててかけ直した。
「お゛わぁあ寒い」
「さとみ起きろぉー!」
「ぐぇ!」
「さとみ〜〜」
「ぼんてっ…起きるっ、う!」
布団にくるまった途端部屋の入り口が開き少年、梵天丸が里美の布団の上に飛び乗った。もう一度眠ろうとしていた里美は上で何度も跳ねられ完璧に目が覚めてしまった。
「…梵天丸君!戸開きっぱなし!」
「あ」
「寒い!締めてください!」
思わず敬語になる里美。
急いで締めに行った梵天丸だが。
「梵天丸様?おはようございます」
「おはよう小十郎!」
タイミングよく小十郎が二人を起こしに来たらしく、入り口の梵天丸と話し始める。
「…」
「さとみ?」
「?」
「…」
さとみは無言で梵天丸を手招きし、彼が近づいてくると素早く抱きしめて布団に潜り込んだ。
「きゃーっ!」
「梵天丸様?!」
「あー温かい…」戸を締めて火鉢と褞袍を用意してもらうと、やっと梵天丸を離した里美。
「凍るかと思った」
「ごめんな?さとみ」
「梵天丸君が温かかったから大丈夫だよ。湯たんぽみたいだった」
「梵天丸様で暖を取るな」
「あはは」
なんて会話をしつつこちらに来てから欠かさず見ている携帯のカレンダーを見る。
(ん?)
「あ…今日クリスマスか」
「?」
「栗と?松?」
「クリスマス」
「「くりすます…」」
「そう」
向こうでのクリスマスを軽く説明する。…ちょっと悲しくなりながら。
「クリスマスは異国の神様の誕生日のお祝いで、まぁそれにかこつけて美味しいものを食べたり子供はプレゼントを貰える日だよ。あと恋人と過ごす日」
「ぷれぜんと?」
「サンタっていう人がいい子の家にご褒美の品をくれるの。貰うには枕元に…足袋片方に欲しいものを書いた紙を入れて置くといいらしいよ」
「ふ〜ん!」
「えらく太っ腹な輩だな」
「まぁ、はい。おそらく今日の夜に来るよ、サンタ」
そう言うと期待した目でこちらを見る梵天丸。
「欲しいもの…書かなきゃ!」
そう言って笑う彼の頭を撫で、運ばれてきた朝餉を部屋で食べた三人だった。
膳が下げられて梵天丸が読み書きの時間に入ると里美は暇になったので廊下をぶらついていた。
「おお寒い…女中さん達大変だな」
こんな寒い日でもせわしなく働く女中達と兵士達を見て感心していると自分も何かしないと、という気になってくる。
「そうだ!」
何か閃いた里美は近くにいた女中達に声をかけ言付けを頼むと、すぐさま動き始めた。
(上手く出来るといいんだけど……)
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