耳に当たる目に付く癪に障る(2)
自分の後ろに少年を庇う丸腰の里美は、静かに視線を周りに滑らせる。

(忍者は今いるので五人。全員手にクナイを所持。横をすり抜けるのは無理。しかし私が…え〜とバサラ者とか言う超能力者だと分かったことにより一度距離が離れた。体形は全員細身で、編隊は扇状。と…よし)

制服のポケットからシャープペンシルと色ペンを取り出し、指の間に挟む。そして不敵な笑みを作りながら口を開いた。

「Are you ready?」
「?!」

敵が動揺しているうちに右手に構えたペンに風を纏わせ、一気に地面を蹴り距離を詰めた。
先手必勝。

(敵の援軍が来る前にケリを着ける!)

水平に右手を払うように動かし、風の刃を忍者たちに当て吹き飛ばす。
すると吹き飛ばした忍者が受け身の体勢に入ったのが見え、間髪入れずにもう一度跳ぶ。
第二撃は上空から打ち下ろすように縦方向におもいきり叩きつける。
すると、上空から打ち下ろした風の刃は地面に叩きつけられるとそのまま地面を抉るように突き進み、忍者たちを追撃。激しい轟音をたてながら木々を薙ぎ倒し土煙をあげた。

「癖になるなよ?」

家でよく遊んでたゲームから台詞を拝借する。そしてくるりと踵を返すと、急いで少年のもとへ走り、手を掴むとそのままの勢いで今暴れた場所を去る。「行こう!」
「っ!」

…高さが合わないな。
走っている最中に風を操りひょいと腕の中に。風で支えているから、おそらく落としたりはしないだろう。
必死に手足に力を入れ動かす。

「死ぬかと思ったぁぁあああああ!」

泣きながら。

「なんだあれ!あの黒づくめ共こんなにかわいい子供を追い回してっ!アホか!ロリコンか!しかもさらになんで一般ピーポーに向かって攻撃すんのバカなの!?端から見たら完璧お前等が悪だろうが!ファッ●ン!私こと刺したし!刺したし!つーかこの風なに!訳分からん!婆裟羅バサラ者とか完璧アレだろマジかよやってらんないべ!なんか特別みたいに言ってたからあの忍者共生きてたら狙われるじゃんか!夜寝れないよ!!うわー!いや死んでても嫌だけど。人殺すとかマジ勘弁!本当に!」

鼻をすすりながら思いの丈を叫ぶ。

「……(汗)」
「とにかくっ!ゼェ、逃げなきゃ!そうだ!ねぇ少年!」

腕の中でびくりと身じろぐ少年。「誰か保護者とか…はっ、一緒に来た人とかはいる?!」
「………、こじゅう、ろうと」
「見たらすぐに分かる?」
「…(コクリ)」
「返事!!」
「おっ、おう!」
「よし!もう少し我慢して!その…こじゅうろうさん?のところに着いたら助かるから!」

顔を見て言うと、少年も私の顔を見て頷いた。
やっぱりかわいい。人間は嫌いだけど害を与えてこなければこんなにもかわいい。
頭を撫でよいしょと抱えなおして走る。
ヒイヒイ必死に走る彼女は、いつのまにかひっそりと掴まれた制服の生地に気づかなかった。
そしてどこをどう走っていたか覚えていないが、

「梵天丸様!」
「小十郎っ!!」

保護者に会えたようだ。
全身疲労困憊で体勢が崩れるが、風を操り少年を浮かせ、保護者に届けた。
少年が相手の腕に無事収まるのを確認すると同時に、里美は地面に倒れた。

「げほっげほっ!がふっ!ゼィゼィ…」
「おいお前!しっかりしろ!」

里美はうつ伏せから仰向けにされ、体を揺さぶられるが倦怠感が増すばかり。

(これは全身筋肉痛確定だな)

なんとか目線を上げると心配そうに見つめてくる少年と保護者。

「ゼェ、しょうっゼェ、ね、ん。はぁ…見つかってっ、ハァ、よ、よかった‥ね」

安心させるために、怠いと駄々をこねる体に鞭打ちひねり出した言葉。
へらりと笑いながら言い、二人が目を見開いたのを見て里美の意識は二回目の暗転を迎えた。

(つーかあの若い小十郎さんってもろBASARAキャラじゃん)
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