樹海に入ってから倒したモンスターはそこまで多くはない。メルクマンサにも当たり前に生息しているフィーンドラビットが2体、スカートの中に入ってきて慌てて殴り倒したフィアフルクリッターが1体、リーチの長さで先手を取って切り裂いた人食い花が1体。そこに先ほどのきのこの兵隊を加えても片手で数えられる。ここのモンスターの多さを思えばこれは少ないくらいだろう。特に多いのは先ほどの動くきのこたちである。 きのこたちは森中を彷徨っている。先ほどの剣撃でひっかかりを覚えたのは核かなにかだろうか。大量発生の理由を考えると人為的な何かの気もしてくる。 カオリは頭上を見上げた。メルクマンサの森も暗いが、樹海と呼ばれるだけあってこちらはさらに暗い。クラウンシャイネスの隙間から僅かに光が差し込む程度である。 見下ろせば杣道よろしく細長いそれがあちこちに続いていた。鬱蒼と生い茂る草木に覆われているため、ところどころで途切れてしまっているのが気になる。 このまま徒に歩き回っていてもまたきのこの群れに遭遇して逃げる羽目になるだけだろう。どこかにさまざまな植物が群生しているスペースはないのだろうか。例えばメルクマンサの森の池の周辺のように、日の光が差し込んでくる場所ならどこかにありそうなものである。 周囲を見渡すと相変わらず木々の隙間から四方八方に道が続いていた。山に入っているためにでこぼこな地面が視界を遮ってしまうのだ。遺体が次々と見つかるどこかの世界のどこかの国と比べればずいぶんマシだが、遭難してしまっては意味がない。 できる限り広い道を選び、カオリは進んでいく。かつてはこの樹海に人間も出入りしていたのだろう。人が入っていた形跡だけは僅かに残っている。おそらく毒を持つモンスターが増えてしまったため、道普請が行われないでいるのだ。