そこを見つけたのは30分ほど歩き回った後のことだった。突然水が流れる音が聞こえ始めたため、耳を澄ますように静かに歩を進めていった。 やがて木々が隙間なく並んでいる一角に出る。 やっと見つけた切れ目からなかを覗くと、そこは広々とした円形の空間だった。日の光が降り注いでいる中央部を除き、その周囲は芝生のようになっている。また2メートルほどの幅の川が向こう側から流れ込んできて空間の中央部に水たまりを作っている。流れはとても緩やかだ。そのせいか水たまりの周囲にだけ草花が咲き乱れている。メルクマンサの池よりも環境がいいらしく、一瞥した限りでも見たことのない植物がいくつも見受けられる。 「やっぱりオアシスはあるんだ」 カオリは目を輝かせた。少し痛くなった足をさすりながら中央部の水たまりへと向かっていく。 水たまりのぐるりに限って成長の良い植物たちがところ狭しと高く伸びている。まるで壁のようである。芝生に獣の足跡が残っているのも見受けられた。近くの生き物はみんなここに立ち寄るのだろう。おそらくこうやって静かなのも今ぐらいか。 美しい水を湛えている。カオリは両手でそれを掬うと口元へ持っていった。ひんやりとして気持ちがいい。 カオリは再び周りを見渡した。水源が向こうへと続いているが誰もいない。カオリは着ていたシャツとスカートを脱ぐと、水につける。 「あーあ、スカートもだめか」 カオリは溜め息をついた。胞子はしつこくこびりついてしまっている。しかし何もしないよりマシだ。 今日は温かいから日に干しておけばすぐに乾いてしまうはずである。 ひと洗いを終えると、三度周囲を見回す。そして今度は上下の下着を脱ぐと自らが水に足を踏み入れた。水深は1メートルほどで、水ぞこに足をついても上半身までは浸からない。 こちらの世界に来てからはこうやって天然の水で身体を洗うことが増えた。誰かに入浴を覗かれるリスクがあるため、このように人の気配のない場所はありがたい。 顔を水面につけると、髪を梳くように指を通していく。 気持ちいい。顔を上げると髪からこぼれ落ちた雫が乳房や背中を伝っていった。水面の皺が収まると、自らの顔がそこに映っている。まぶたの落ちたそれを見るに、少し疲れているだろうか。 一度水から出ると、日の光が当たる一角まで裸のまま歩いていく。そしてシビネラの力を解放した。シビネラは水辺に咲くススキに似た植物だ。光合成速度が速いらしく、日の光が当たる場所では体力や植物のエネルギーの回復効率が上がるようだ。 体育座りをしているだけで足腰の痛みが取れ、その安らぎにだんだんと眠気が襲ってくる。体力を回復する効果は非常に有用なのだが、欠点は晴れていないと使えないことだろう。そしてその効果は日光に触れる皮膚面積の大きさに影響を受け、こうして一糸まとわぬ姿にならなければあまり効果が出ないことだ。若い娘が野外に裸でいるなんて無防備過ぎる。そしてそのまま身体を横たえると仰向きのまま天を見上げた。控えめ木の枝の間がちょうど円形に切り取られている。手をかざすと日の光を浴びて5指が輝く。まずないとは言え、誰かが入ってきたらと思うと体が強張ってしまう。物音がしたらすぐに木に化けてしまおうと手にだけは力が入ってしまう。 だが抗うのが難しい安らぎである。 カオリはうつらうつらと意識を途切れさせつつあった。