菌糸を撒き散らすキノコの兵隊。 その白い粉末が辺り一面に広がった。ソーヴァは両手を広げてそれらが地に落ちるのを待つ。 本来なら人体に毒をもたらし、皮膚の炎症が激しいとされるこの菌も、それらを防ぐアクセサリをつけている自分には無効である。 やれやれ。 ソーヴァは手に持った三叉槍をぐるぐると回すと、腰を僅かにかがめた。 「あばよっ!」 爪のように分かれた鋒はきのこの兵隊の前面を切り裂いた。3つの溝から紫色の光が微かに明滅すると、そこから全身がとけ始めた。 白くドロドロになったそれらが飛び散る前に溝へと退避する。パン! という破裂音が収まるとソーヴァは再び立ち上がった。 倒した後の爆発さえなければそこまで厄介な相手ではないのだが。 白い泡が辺り一面を覆っている。泡にまみれて転がっている核を見つけると、ソーヴァは篭手をつけたままそれを拾った。 「あと8つか」 ギルドで受けた依頼はアラリックの樹海にはびこるキノコの兵隊の狩猟。その依頼数は10匹と多くはないが、毒や麻痺を引き起こす特性と退治後に爆発する厄介仕様のせいか、冒険者の多くは受注を避けるようだ。もっとも新米冒険者であり、武者修行中のソーヴァには仕事を選ぶ理由も余裕もない。たまたま祖母の形見の首飾りが毒や麻痺を防いでくれるのだからお誂え向きとさえ言える。 核を手のひらで弄びながら、ソーヴァはさらに樹海の奥へ進んでいった。