ソーヴァ・マーシリーは最強の戦士となることが夢だった。しかしその夢を思い描いていたのは幼き日のことで、今はそこまで純粋な気持ちを抱いているわけでもない。 ソーヴァは欠伸をひとつして道なき道を進んでいく。騎士と見紛うような鎧を着て森を歩いていれば疲れるものだ。まだ新調したばかりで着慣れないためか、肩凝りもひどかった。 ソーヴァの鎧や兜は緑色に輝く鋭利なデザインである。ドラゴンの爪や牙をイメージしたそれには、冒険者となってかき集めた報酬を惜しげもなくつぎ込んだ。幼き日から鍛錬を積んだ槍術には絶対の自信がある。あとは防御を固めれば隙はない。 自身が絶対的な強さを得たい。そしてそれを実感できるようになりたい。これがソーヴァを突き動かしている動機だ。 かつては王都の騎士団に入りたいと思っていた。しかしスィメア国騎士団のレベルの低さは有名で、挙げ句入団試験があまりにお粗末だったことからすぐに幻滅してしまった。 その結果、今は(きっと世界一)お粗末なギルドで受けた依頼をこなして辺鄙な山道を駆け巡っているわけである。いくら昼行灯が当主とはいえ、騎士団の規律は厳しいし、今となっては風来坊の方が性に合っていた気もする。 もう大方国内は旅して回った。そろそろ隣国へ行くべきか? そんなことを考えていると、木々の茂みの裏で何かが動く音がした。