跳躍に風の魔力が加わり、ぐんぐんと空に向かっていく。そして石柱の7分ほどの高さまで来たとき、ダンクスは斧を掴む手に力を加えた。 デトリュイール。マークレンのつてで入手した破壊力抜群の戦斧は手のひらのなかで黒光りしている。 なんとしてでも倒したい相手ではないせいか、アポスタイトは石柱の向こう側に消えたまま姿を見せない。 今にも破裂しそうな白い表面。 やるしかない。 一瞬の遅れも許されないとばかりにダンクスは斧を振り抜いた。 「吹き飛べ! レヴィーブレイク!」 斧の断ち筋は真一文字に延びていき、石柱に刻んだそこから金色の光が溢れ出してきた。続いて四方八方に罅が入り、やがて石柱の向こう側まで見通せるほどの大穴を穿った。轟音が削り取られた石材を向こう側へ弾き飛ばしていく。突風を振りまきながら石柱が崩れ始め、全体が纏っていた白い振動は急速に動きを鎮めていった。 ほんの一瞬の隙を見て穴の向こう側を見やる。ちょうどアポスタイトの姿が望める位置だった。アポスタイトは空中で腕を組み微動だにしない。やはり今すぐ襲ってくる意思はないようだ。彼はこれだけの魔法を放っていながら、まだ遊びの次元のつもりなのだろう。 石柱が傾き再びアポスタイトの姿が消える。そのとき大きな音がしたが、それが吹き飛ばした石の塊のせいか、平原側の石柱の爆発の音か、判別がつかなかった。 騎士団が無事ならいいが。その言葉を脳裏に浮かべながら、一方で考えないようにしている自分がいた。 ただここでやりあったところで自身たちに勝ち目はない。なぜなら……。 そうして順番は来た。視界の左側で白い光が溢れ出している。その光の輪郭が小刻みに震え、自身に迫る危険を予感させた。 爆発の順番は右、中央、左。ほぼ同時となれば逃げ切る術はなかった。 「ちいっ!」 爆ぜた。ダンクスが両腕で顔面を庇ったのと同時だった。爆発を止めて向こう側に倒れていく目の前の石柱ではない。ノーマークで爆発に向かっていった左側のそれだ。光ったと感じるや否や、ダンクスの全身を大小の岩石が襲った。 ソフィアは無事だろうか。耳を劈く爆発音がすべての感覚を遮断した。