メイルディゾルバがバリアの表面に到達する。 刹那、稲光に似た光が周囲を包み込んだ。一瞬の閃光が辺りを照らし出すと、魔将の展開していたバリアはガラス細工のように粉々に砕け散った。 今だ……! ダンクスは畳み掛けるように横薙ぎを見舞う。禁呪の杖は斧を防ぐために位置がずれ、必然的に構築されかけていた魔法が瓦解しその顕現をやめる。 「オラぁぁぁぁぁぁ!!」 ダンクスはそのまま斧を押し込んでアポスタイトの体勢を崩した。ぶれた右腕から解放されたエネリスもすかさず鎌を振り上げる。 「ちっ!」 アポスタイトの舌打ちが聞こえる。ダンクスが逆袈裟方向に打ち上げると瞬時に移動して僅かに後方に浮かび上がっていた。 なんてスピードだ。ダンクスは周囲に展開する風の魔力を強める。 続いてオレンジの光が真上から切りかかる。しかし再び発生したバリアが再び攻撃を封じた。 「バカのひとつ覚えだな!」 アポスタイトの眼光が強まり、バリアが一瞬で拡大する。暴風に似た荒々しい音がして死神の鎌は刃先から砕け散った。 続けざまにエネリスの胸倉を掴んだアポスタイトは、盾の要領でエネリスをダンクスの前にひね上げていた。 「あの世で寝てろ」 ひときわ低い声が響き、暗色の槍が3つ虚空に出現した。ひと1人分の長さはありそうな無骨な黒い針は、回転しながら迫りきてエネリスのローブを貫く。人間ならただでは済まなかっただろう。エネリスとその召し物は音もなく砂粒とともに夜空に舞い散った。 「この野郎っ!」 ダンクスは超振動の斧で再び殴りかかる。メイルディゾルバは障壁であれ竜鱗であれ一撃で粉砕して相手の防御力を奪う。魔将にダメージを与えるにはこれしか手段がなかった。 やはりバリアは砕け散る。しかし1度目とは違いアポスタイトとまともに向かい合うことになる。 アポスタイトほどの手練となれば下〜中級レベルの魔法に詠唱などないようなものだ。それこそエネリスを消し飛ばした一撃ぐらいならば。 「お前は死神みたいにはいかないんだろう? 覚悟はいいか?」 アポスタイトが闇のなかで口角を上げた。背後にはエネリスを打ち貫いた闇の槍が再び顔を覗かせていた。 「食らいな。シャドウ・ピアサー!」 ダンクスは後ずさって斧を構えた。槍は僅かな差をもって段々に飛んでくる。 1つ目の槍を斧で弾くと黒い光が焼き付くように表面を拭った。すさまじい衝撃に腕が痺れる。 魔将が放った数々の魔法のなかでどう考えても最下級レベルのそれだ。にも拘らずこの威力なのか。 ダンクスは2本目の射出と同時に空に飛び上がった。 あの槍。どう考えても追尾性能だろう。よほどうまく避けなければ地平の彼方までも追ってくるに違いない。 ダンクスは獣王の白い鬣を全身に纏った。隙を与えれば終わりだ。ここは果敢に攻める。 「勝負しようぜ、ストルツレーヴェ!!」 ダンクスは風圧を伴って魔将のバリアへ突撃した。荒れ狂う風は2発目の槍すら正面から打ち砕き、見えない壁にぶち当たる。 しかしバリアは壊れない。ガタガタと震えながらも刃先はアポスタイトを捉えることができない。 アポスタイトが左手を打ち出そうとするタイミングでダンクスは攻撃を打ち切った。真後ろに迫っていた3本目の槍がぎりぎりの退避に対応できずバリアに弾けて消える。