最初にそのとば口に立った時、嫌な印象を抱いたことは否定しない。深い深い山へと続いていて日の光が差し込む場所などほとんどないに違いない。 ここはアラリックと呼ばれる樹海である。メルクマンサから徒歩4時間はかかる距離にあり、朝早くから休み休み歩いてきたカオリがそこに辿り着く頃には日が真上に昇っていた。 なぜカオリがここに来たのか、まずその理由を説明せねばなるまい。 ヒュルデンたち背教者の事件が収束してから数日の後、カオリはなんの気なしにドリアードに尋ねた。 「近くにめずらしい植物が集まっている場所はありませんか?」 と。 単にメルクマンサ近隣以外の植物を見てみたいという理由もあった。しかし本音を言えば先の背教者たちの強力な術に苦戦したことが一番の動機だった。新たな植物の力を得ることはカオリの戦闘面でのアドバンテージとなり得るため、新たな敵の出現に向けた対策を試みたのである。 ドリアードは考えるような仕草でしばし沈黙した。ウェーブした緑色の髪はそよ風に吹かれるように揺れている。 「そうですね……」 ドリアードは数秒の間を置いて続けた。 「ここから近くに植物の豊富な樹海があります」