「あの2人娘がディットンズウルフを倒してしまうとは、驚いたね。これは戦力になる」 メルクマンサ村自警団の団長ライノスは、さも鼻高々と言わんばかりに高笑いする。 ダンクスは思わず自分の耳を引っ張った。本当に耳が痛くなる。 ライノスは自分の子供と年齢の変わらない若い娘たちが可愛くて仕方ないのだろう。人の親ともなればこうなるものか。 「確かにカオリには力があるし、妙な魔法も使えます。ほら、魔法じゃなくてなんとかだって言ってますが。それにソフィアだって戦闘慣れしていないだけで元来優秀なやつですから、これぐらいのことはやってのけますよ。ただ、あのふたりが組むのも少し心配してしまいますよ」 団長に対して我ながら口うるさいとは思う。ソフィアにはまだ早い。前線に立てることを反対しているのもメンバーのなかでは自分ぐらいなものだ。 「ダンクス……。まあ、君がソフィアを妹のように思っているのはわかるが、カオリもいるし気にし過ぎだろう」 「むしろそっちが心配なんですよ」 カオリの剣術を含め、その能力は折り紙つきだ。しかしどうもドジというか天然なところがある。 例の植物を操る力もーー初めて見た時は驚いたがーーソフィアと共に練習に付き合ったが、ふたり揃って2回ずつ蔓で磔にされてしまっている。それでも土壇場で生き残ってこられる強さが彼女にはあるが、周りの人間まで守り切ることができるのか。 「お前さんも過保護になったものだな」 そう言うとライノスは嗅ぎタバコを鼻にやった。 確かにそうかもしれないな。自分だけが認められずにいるのかもしれない。 「……おおそうだ忘れていた。トルネイさんがお前のことを呼んでいたぞ。後で寄ってきてくれ」 「トルネイさんが? わかりました」 「素っ気ないな。というかなんだその苦虫を噛み潰したような顔は」 「いいえ。どうせ害虫退治とかそんなことでしょう」 「なるほどな」 それだけならばダンクスも嫌な顔などしない。トルネイは村でも評判の世話焼き婆さんなのだ。昔から成婚させたカップルの数を誇っていたらしいが、今は若者自体が少ないために欲求不満らしい。 なんて面倒くさい趣味を持っているのだか。ダンクスは溜め息を漏らしつつ立ち上がった。 「おおそうだ。今晩はカオリの歓迎会をやるからな。遅れずに頼むぞ」 「了解」 ダンクスは背中を向けたまま返事をする。 カオリが森に現れてから、7日が過ぎていた。