頭が痛い。 頭が痛い。 頭が痛い。 寝返りを打つ。 頭が痛い。 二日酔いとはこういうものか。 カオリは頭を抑えながら唸った。 「ううーっ……」 目を開きたくない。光が眩しい。 ……光が眩しい? そうだ。この小屋にはまだカーテンがない。 使えない暖炉など、設備を見るに以前の住民は多少なり小金持ちだったのかもしれないが、引っ越すならばカーテンも置いていってほしかった。この世界では一般的ではないのだろうけれど。 カオリは目を瞑ったまま枕元のスマートフォンを探る。どこにもない。 そして悟る。ここは日本ではないのだと。1週間が過ぎても、この小屋に住み慣れても、未だにかつての習慣は抜けないでいる。 大学生ならばこのまま丸めた布団に抱きついて眠っていればよかった。しかし今はそうはいかない。 もう起きないと。頭が痛いけど、動けないレベルじゃない。シーツの肌触りが気持ちいいけれど、もう動き出さないと。 カオリは意を決して思い切りの力で上半身を起こした。 昨夜の歓迎会。ここまで自分が酒に弱いとは思わなかった。会場では寝息をたて、ソフィアに家まで送ってもらったところまでは思い出せるのだが。 酔いつぶれた翌朝の顔のひどさを確認するために鏡まで歩いていく。途中何かを踏みつけたが、気にしない。 鏡に映る眠そうな目と寝癖はなんとかしたいが、他はいつもとさして変わらない。良かった。 この世界に来て痩せただろうか? カオリは自身の肩を抱く。いや、よく動くようになったせいか食べる量は増えている。そのおかげだろうか体重はあまり変わっていない。鏡に映し出される胸だってむしろ大きく……えっ? 「えっ……あれ……?」 絵画のなかの女神よろしく、生まれたままの姿の自分がいる。 「どうして裸なの?」 思考が止まる。1秒、2秒。 カオリは慌てて(窓から見えない位置取りで)入り口のドアへ向かう。 やはり昨晩ソフィアに送ってもらったところまでは記憶にある。そして退室の際に彼女が言った言葉「鍵はしておいてくださいね。おやすみなさい」も。 返事をしておきながら動くのが億劫だったカオリは、施錠もせずにベッドへ向かった。確かあの時、火照った体が気持ち悪くて服を一枚一枚脱いでいったはずだ。 案の定ドアの鍵はかかっておらず、ドアノブを回すとあっけなく外の世界が顔を出したため慌ててドアを締めた。 不注意過ぎる。こんな田舎町ならば襲われる危険性はないだろうが、翌朝もう一度様子を見に来てくれたソフィアと対面しようものならもはや大惨事である。 カオリは慌てて衣服をかき集める。こんな時に客が来たら大変だ。 しかし無情にも響き渡るノック音。 「カオリさん、大丈夫ですか? 開けますよー?」 ソフィアの声だ。間一髪辱めは回避できたようだ。 「ちょっと待って今着替えてるー!」