その頃、メルクマンサの村では……。 「エレーナ! 頼む!」 「火傷しないでよっ!」 メルクマンサの門の近くにラヴィッジウルフの姿があった。 ラヴィッジウルフの攻撃を巨大な盾で防ぐマックレアという騎士の男。腕は確かだが、根が真面目過ぎて出世しそうにないタイプだ。 エレーナと呼ばれた女は、木の杖の先で小さく円を描くうちに詠唱を終え、赤い熱線を地面に浮き上がらせた。刹那、熱線は直進していってラヴィッジウルフの真下にて動きを止める。次の瞬間には地面に浮かんだ赤い線から爆炎が広がっていた。爆音とともにラヴィッジウルフの影が紅蓮の放射に消える。 至近距離のマックレアには怪我はなかった。上等な装備のおかげだが、その事実を差し引いてもエレーナという女の炎の魔法のコントロールは見事だった。 「グオオオオオオオオオオオッ」 ダンクスは舌打ちした。ラヴィッジウルフ2体が村の門の真ん前にいる。由々しき事態である。 ラヴィッジウルフは名の通り極めて凶暴な魔物なのである。今までの雑魚とはレベルが違っていた。騎士団からの派遣がなければ少々厄介なことになっていたかもしれない。 幸いソフィアとカオリは不在。カオリひとりならあの能力で逃げられても、ソフィアの面倒までは見きれないはずだ。 「てめぇ、どうしても引かねぇってんだな」 ダンクスが睨みをきかせるが、ラヴィッジウルフの意思の感じられない目つきには変化がない。 だったら今ここで消えてもらう! ダンクスは巨大な斧を振り上げ、眼前に迫るラヴィッジウルフの額に激しく叩きつけた。 (第4章 終わり)