マックレアは声につられて建物のエントランスに視線を向けた。そして思わず息を呑んだ。 入ってきたのは眼鏡をかけた亜麻色の髪の女性と、黄色い肩までの髪の女性である。どちらも田舎町には不似合いなほど美しく洗練された外見だったが、特に後者は目を引いた。 鮮やかな色の髪はもちろんのこと、深窓の令嬢のように傷ひとつない美しい肌をしており、整った顔つきはこれまでに見た誰よりも調和の取れたそれであると断言できた。まして深みのある色の瞳は、覗き込めば体ごと飲み込まれていきそうなほど澄んでいて、5つ数える間も見つめていればクラクラしてしまう。 不意打ちだった。いや、自分が無防備過ぎたことはマックレア自身気づいていた。しかしまさかその女性がこちらを見つめて微笑むとは思われず、その瞬間胸に剣を突き立てられたような衝撃が走った。なぜか両手両足を鎖で繋がれたような錯覚に陥る。わからない。いや、わかるのだがわからない。ひとつ言えるのは、この女性がとても美しいということだ。 「あ、すみません、もしかして王都の騎士の方ですか?」 麗しき村娘が首を傾げた。 「……? ええ、そうよ」 エレーナが困惑気味の表情でこちらを見てから返事を返す。 「これは失礼致しました。私はソフィア・リフェリオ。メルクマンサ自警団の者です」 女性Bは深々と頭を下げた。 「はじめまして。同じくカオリ・キサキと申します」 カオリ。可憐な名前だ。書物のなかに同じ言葉の並びを見つけただけで胸が高鳴りそうだ。 「よろしくお願い申し上げますわ。私はエレーナ・ミルフレア。こっちの冴えない顔の男がマックレアよ。……ちょっとマックレア聞いてる?」 「は?」 「…………」 エレーナが井戸の底まで届きそうな深い溜め息を漏らした。 そして結った自慢の髪を払うと続ける。 「今、ダンクスさんが団長に報告に行かれていますので、ここで私たちは待たせていただいていますわ」 「そうでしたか。申し訳ありません。我々も戻ったことを報告に参りますので、もうしばらくお待ちいただけますか?」 カオリともうひとりの女性がこちらに視線を向ける。 「はっ……はい」 めまいがしそうだ。しまいには猛暑日の鎧ですら気にならなくなりそうなほど顔が熱く火照り始めている。 カオリらが会議室へ入っていくと、エレーナがマックレアの肩を小突いた。 「ちょっと」 「なんだ薮から棒に」 「あんた、あのカオリって子に惚れたでしょ?」 「ばっ、バカ言え! 確かに美しいとは思ったが、初対面の娘に心を奪われるわけなかろう」 「ふーん……」 エレーナの眉間に皺が寄っている。なにか怒らせるようなことを言ったのか。 「あんた、ああいう子が好みなのね。確かにすっごい美人だったけど」 マックレアはなんのためらいも見せずに頷いた。 「誰かさんと違ってスタイルもいいしな」 スレンダーなのはいっしょだが。 「なんで私を見るの? っていうかアンタどこ見てんのよ」 エレーナは胸元を隠してますます眉間の皺を深めた。 「別に」 「あんた表に出なさい。火で炙ってやるから」 それにしても可憐だ。初めて見た瞬間から頭上を幾千の天使が飛び回っている。 「話を聞きなさいっ!」 背後から来る赤い光。バチバチという音と熱。これは……。 「アチチチチッ! 室内で魔法を使うな!」