「と、言うわけなんです」 カオリとソフィアはラヴィッジウルフに襲われた行商の男を助けた話をしていた。 お礼ということで、村には行商の馬車に乗せてもらい帰ってきていた。ついでに壊れたロングソードの代用品としてヴァイリーソードなる剣をもらっている。ロングソードより強力な金属製の剣だそうだ。 「まさか、カオリがあれを倒してしまうなんてな。お前は本当に未知数だ」 ダンクスは「もう今さら驚かんがな」と続けた。 「それより、ラヴィッジウルフが村にも入りそうになっていたことの方が問題かと思われます。ことは一刻を争うのでは?」 ライノスの表情が陰った。 ダンクスは黙っているが、考えていることは同じだと思われた。 「お前たちの言う通りさ。術師のエレーナ殿によれば、あれはアンチセフィロトの背教者による仕業の可能性が高いらしい。場所もあらかた特定されているが、敵の素性がわからん以上、迂闊に踏み込めまい。しかも我々が討伐に人員を割いてしまえば、その間村の警備は手薄になってしまう」 昼間にダンクスが騎士のふたりと調査に赴いたのだという。敵の居所もほぼ間違いないとのことだ。しかし敵の数がわからない以上、下手に攻め込むことは危険だと判断したらしい。 ダンクスが組んでいた腕を解いた。 「今は騎士のふたりもいますし、少人数でも大丈夫でしょう。団長と俺の4人で……」 「ダンクス」 ライノスがダンクスの肩に手を置いた。 「お前は少しは自分のことも大事にしろ。元セフィロト教団の連中だ。下手をすればただでは済まん」 話に聞く限り、セフィロト教団というのは相当な実力者を抱えているようだ。奉っている神がアレというのが実に滑稽である。たぶん言っても信じてもらえないだろうけど。 「そうです。ダンクスさん、私も行きます」 ソフィアが胸元に手を当てて一歩前へ進み出た。 ダンクスは驚いた顔をしている。 ソフィアはダンクスのこととなるとなかなか引き下がらない。それほど信頼する先輩ということなのだろうか。 「ソフィア、お前は……」 「ですがっ!」 ダンクスの窘(たしな)めるような目。しかしソフィアは引き下がらない。 「ダンクス」 ライノスが再びダンクスの名前を呼んだ。 「団長」 「私は何も攻め込むなと言っているわけではない、なにか策を考えろと言っておるのだ。剣を構えてただ乗り込むよりも、弓のソフィアがいた方が戦略上役に立つこともあるはずだ。自分ひとりでなんでも抱えようとするんじゃない」 背負い込もうとするダンクスだが、仲間を大事にしたいという点ではライノスも同じなのである。つまり、無鉄砲に攻め込まず、退路も残しておけということなのだ。 弱腰と言えばそれまでだが、相手の正体がわからないのならばそれも正しい判断だろう。 「あの、それだったら私が行きます」 カオリが挙手して割って入った。 「私なら囮もできますから、どれだけ魔物が出てきても大丈夫ですよ」