ダンクスが門の扉を蹴り開ける。 「いくぞ」 露払いを務めたのはダンクスだった。続いて重装備のマックレア、エレーナ。最後尾は援護要員のソフィアと、モンスター引きつけ役のカオリである。ライノスには村の警備を任せたため、突入班はこの5人となった。なお、騎士団にも前日すでに連絡を向かわせていた。 5人は広い庭を行く。正面入口へは向かわず、あらかじめ調べておいた東側の裏口を目指す。そこのドアはすでに壊れており、何者かが簡易な鍵を取り付けているようだった。 「ここだな」 ダンクスは当たり前のように斧で錠前付きの鎖を一刀両断した。 ドアを開くと、まっすぐ廊下が続いていた。廊下の左右には整然とドアが並んでおり、足元にはくたびれた真紅の絨毯が敷かれている。埃臭さ、カビ臭さがひどく、放置されて長い年月が経過していることがわかった。絨毯には砂埃と足跡が無数についており、映画のなかの没落貴族の屋敷を思わせた。 「さあ、どこが怪しい?」 ダンクスが呟く。 「どこかに地下があるでしょう。魔物を隠すのなら地下が怪しいはずよ。もっとも魔物を呼び出す儀式なら広い部屋さえあればいいから、難しいところね」 カオリも考えてみたがわからない。ただこれだけ広い屋敷でありながらなかはしんとしている。やはり黒幕は少人数と見ていいだろう。 ちなみになぜ地下室があることが前提なのかというと、この屋敷に地下室があるらしいことが昔伝聞で広まっていたからだという。丘の上に建つ建物ならば安定性を求めて地下室を作ることも多いため、不思議な話ではない。 「的を得ているな。人間は声を出さなくても、魔物は突然吠えたりするものだ。地下にいると考えた方がいいだろう。エレーナ、儀式には大がかりな準備が必要なものか?」 「召喚儀式も込みとするのなら、結界を張ったりするから部屋自体はそれなりよ。ただ持ち込みの道具はそこまで多くはないから、少人数であっても2階ですることも可能だと思うわ」 「堂々巡りか。しかし凶暴な魔物をわざわざ地下室まで連行しているとしたら結構な手間だ。地下室で行うのが合理的だが」 ダンクスが独り言のように呟いた。地下室は逃げ道が制限されるため、あまり深入りすることは得策ではない。虎穴に入らずんば虎子を得ず。彼自身そのジレンマに悩んでいるようだ。 「取りあえず1階、2階と見て回って、それでだめなら地下室へ入りましょう。地下室への入り口も見つけないとね」 エレーナの意見に全員が頷いた。 通路の向こうには2階へと上がる大きな階段がある。 ふたりの男が入っていったのが目撃されているのだから、何者かがこの空間にいることは明らかだ。しかし人の声も魔物の声も聞こえて来ないとなると、地下室への階段は近くにはないのかもしれない。