「私としてはこれが一番似合ってると思います。どうでしょう?」 ソフィアは白と赤のエプロンワンピースを手にニコッと笑った。 「そ、そうかな。なんかロリータファッションっぽくない?」 カオリは苦笑する。 「……ロリータ? それってなんでしょうか?」 「ううん、私のいた世界の小説の名前」 口ではやんわり否定しているが、正直言ってこの服はかわいい。しかしもとの世界にいたら間違いなく「普段着」でなく「コスプレ」の範疇である。頭にフリルのついた飾りでもつければ完全体だろう。せっかく異世界に来たのだから人目を憚らずに着るものも楽しみたいところだが、まだ少しこの格好には抵抗があった。 「こっちの世界ならこんなものなのかなぁ」 まじまじと見ていると、確かに普通の村娘のファッションにも思えてくる。値段も悪くない。 「私もそれはおすすめだねぇ。合わせてみたらどうだい?」 店主のナーナイは恰幅のいい体を持ち上げてカウンターから登場した。 ナーナイ・マフィリー。メルクマンサ村唯一の女性洋服屋の店主である。顔にはシミが散っているが愛嬌があり、ふくよかな体格も手伝って人好かれする人間である。歳は50過ぎだと思っていたが実際には10近く若いという。日本人が若過ぎるのだろう。 ナーナイの夫はマークレンといい、こちらはモンスターの素材などを買い取って商売している。ふたりで大きな家を2分割して仲良く商売している。もちろん物理的に家を分けるというのは簡単ではなく、ところどころに皺寄せが来ている。例えばマークレンの店が異様に狭かったり、ナーナイの店に変な臭いが漂う日があったり……。 「ぜひぜひ、お願いします。ね、カオリさん?」 カオリは渋々頷いた。ソフィアは眼鏡の奥で人の好さそうな目を細める。ソフィアがそこまで喜ぶことなのだろうか? そこまで考えてカオリはあることに気づく。そう言えばこの村にソフィアと同世代の女性はほぼいなかった。こうやって同世代女ふたりで買い物をした経験などなかったのだろう。 カオリはナーナイに促されてパーテーションの裏に移動した。残念ながらそれは使い古されおり、ところどころ透けてしまっている。この世界のプライバシーの概念は詳しくないが、婦人服専門店だから問題にならないのだろうか。 カオリが胸元のボタンを外すと、店のドアが開かれる音がした。