「開けてください! 開けてください!」 カオリは巨大な扉を叩く。王都の南門は閉鎖され、暗闇の中に取り残されたようにひっそりとしていた。 ダンクスらはどこへ行ったのだろう。ウィクルト平原なら南門から出るはずではないのか? カオリは息を切らしながら叫んだ。 反応はない。やはり誰もいないのだろうか? 確かにそう思えたのだが、よく耳を澄ますと門の奥から声が聞こえていた。ふたり組の男性と思しき低い声のやりとり。それも会話の主がこちらに近づいてきているようで、僅かにその内容が漏れ聞こえてきた。 カオリは逸る心を押さえ込むように深呼吸すると、扉に耳をつけて言葉を拾い始めた。 「……神官長は!?」 「……西の……」 「……なに!?」 「……陣営が……このままでは」 神官長、と言っただろうか。確か大陸各地にあるセフィロト神殿を統括する役職のはずだ。この一大事である。王都内を駆け回っているに違いない。 「……この音……」 「放って……。今扉を……王都中に……」 カオリは再び扉を叩く。鉄製の扉がゴンゴンと大きな音をたてる。しかし反応はない。 無視されている。その可能性に気付いたカオリは扉に背を向けて夜空を見上げた。西洋の歴史的な都市のようにぐるりを城壁に囲まれているわけではないが、川や崖が障壁となっていてどこからでも外に出られるわけではない。 空に閃光が走る。想像の域を出ないが、おそらく光属性の魔法だろう。ゾンビ軍団と騎士たちが戦っているというのは本当なのだろうか。 こんなことが知れれば国民は大混乱になる。だから城門を閉鎖し、その声を聞こえない振りをしている……。 なら他の門から出るしかない。カオリは東門へと駆け出した。昼間に馬車で到着したあの場所へ。買い物途中に見物した南門とは比較にならない小さな門だが、それゆえ抜け出る方法はあるに違いない。 走り出すと、道具屋の店先に夜空を見上げて不安そうな顔をする夫婦の姿があった。聖騎士たちが隠し通せるのも時間の問題だろう。