Passenger List@

アラームが鳴るよりも早く目が覚めて、枕元に置いていたスマートフォンで時刻を確認しようとした。
着信履歴が残っていることに気づいたなまえは布団から出ると昨夜脱いだスーツのポケットから名刺を取り出して見比べた。普段ならすぐ削除してしまうのだが、なんとなくその番号に見覚えがあったのだ。

(昨日のお店からだ)

昨夜は鶴見さんとお話しして、帰りのタクシーが走り出した後に忘れ物に気づいた。きっと電話はその件だろう。
彼からも着信が入っていた。

「そういえば、シライシさんとも連絡先を交換したな」

初めて親戚以外の男性と連絡先を交換した。酔った勢いとは恐ろしい。
こっそり取りに行ってサッと帰ってこよう。なまえは一人頷くと、せかせかと出かける準備を始めるのだった。


──数時間後、


「またうっかりを…」

いわゆる"夜の飲食店"と同じく、開店時間は日が沈んでかららしい。
そういった店に来店する機会が今まで無かったなまえは開店時間より早くに来てしまった。

(気持ちが萎えた。もう帰りたい。でも何回も来るのやだな)

太陽が沈む時間が早くなってきたとはいえ、そう都合よく始業時間は変わらない。要件を済ませたらすぐに帰ろうと思っていたため手持ち無沙汰だ。どこかで時間を潰すことにしよう。
そう思い踵を返した途端聞こえたうめき声に、なまえは急いで辺りを確認した。 店員だろうか。店から出てきたスーツ姿の男性は、足腰が立たない状態まで泥酔しているのか。扉の近くで俯いたまま座り込んでしまっている。とても体調が悪そうだ。

「大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」

背中をさすったのが悪かったのか。呼びかけに返ってきたのは吐瀉物だった。

「お、お疲れ様です」
「すみま、せ…っ」
「いえいえ」

(エコバッグ代わりにビニール袋持っててよかったぁ)

あまりにも苦しそうなので袋を開いてティッシュを詰めて渡すと、おにいさんはこちらから見えないよう背を向けながら吐き出していく。

「店先なので、楽になったら移動しましょうね。お水とお茶どちらが必要ですか?」
「み、水……」
「了解です」

一人のほうが吐きやすいだろう。私は最寄りのコンビニまで全力で走った。



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