盛夏満喫計画〜そのB〜
レッドラインを跨いで東側、ビビの家がある偉大航路(グランドライン)近く。彼女の知り合いであるトムさんが営む酒場で、四人は額を突き合わせていた。
「大丈夫?由梨菜さん」
「人類史上初の出来事は皆びっくりするだろうから大丈夫」
「動揺しているわね」
「あははははっ!」
「と、トムさん。ジンジャーエールください」
「あぁ分かったよ。ほかのお嬢さん方は?」
「私はオレンジジュース」
「コーヒーを頂けるかしら?」
「わたしはコーラ!」
「分かりましたよ。少々お待ちください」
思い切り溜息をついた由梨菜。
「トムさんの笑顔癒される…大きいぬいぐるみとか売っていないかな…」
「無いわよ由梨菜さんっ!?」
「重症ね」
「あはは。こんなおじさんにありがとよ」
サービスだと貰った冷えた果実に彼女等は歓声を上げる。
お礼を言い、喉を潤したところで由梨菜は本題に入った。
「ビビには夏休みの話言ってるよね?」
「えぇ!勿論!」
「皆で遊べるなんて素敵!イガラムを撒いてでも行くわ!」
「ウフフ。勇ましいわ」
「──あのね、でも私用事が出来ちゃって」
「デートよ!デート!」
「えぇっ!!!?由梨菜さんが!?」
「まさかあの"お菓子小町"がねぇ〜」
「違うよぉ…どこのだよぉ…」
由梨菜の性格を理解しているが故に気になる。
大騒ぎになる中、なんとか由梨菜はビビにも事情を説明した。
「そんなことがあったなんて…」
「それで小豆色の方もといカタクリさんに、電話で日程を教えることになったのね」
「アンタにしたら進歩よ進歩。いや進化?」
「人類から何に進化するの!?」
「女の子よ!!/ね!!」
他三人から力強い返答が飛んでくる。
「アンタ前なら断ってたでしょう!」
「だ、だって何か軽いし。御祖母ちゃんのコネ狙いで声掛けてくる人だったりもしたし」
異性から粉をかけられることはあったが、軽薄そうな態度にその都度断っていた。
「それに、もし何か言われて嫌な思いをしたら、もうお店に行かなければいいかなって」
「…それもそうね。じゃあ海水浴に行く日を決めましょうか?」
「賛成ー!」
それ以上触れず、ナミ達は話題を変える。
"こういう事"は指摘しても本人が解らないと意味が無い。
親友達は気づいていた。
暗い表情になってしまった彼女はもう、恋をしているのだと。
「じゃあまたね」
「買い物は当日。財布忘れるんじゃないわよ!」
「うん」
「それじゃあ二十一日に」
夏休みの終わり頃に全員の日程が空いていたため、海水浴に行くのはその日に決まった。
何度も話題が逸れたため、すっかり周囲は夕暮れで赤く染まっている。
「あ、今年は忙しいからベルメールさん手伝いは業者に頼むって。由梨菜によろしくって言ってたわ」
「そうなんだ。分かったよ」
「だから海水浴か学校でデートの結果教えなさいよ!でないと五拾万ベリーね!」
「えーっ!?」
「私も気になるわ。よろしく由梨菜」
「夏休み明けが楽しみね」
有言実行の彼女に言い訳は無効。
いつもの帰り道で言われた台詞に絶句した。
スタスタと帰っていってしまった三人の影が消えた後、由梨菜は気づいた。
(あ、手紙見てなかった)