泥船に花を植える(6)

「今、なんて仰っていました?」
「メリエンダよ。おやつという意味があって」
「それだ!!」

由梨菜は勢いよく立ち上がり叫んだ。

「ずっとお店の名前が分からなくて!外の国の言葉というのは分かっていたんです!」

疑問が解けてすっきりしたと晴れやかに笑う由梨菜は、今にもその場で飛び跳ねんばかりの喜びようだ。
店の名前を知らなくても菓子の味で足繁く通っていた彼女に何だかおかしくなり、ブリュレとプリンも釣られて笑う。緊張が解れた三人は談笑を続け、それから少しするとペロスペローとカタクリが部屋に入ってきた。

「随分と仲良くなったようだね」
「ぺロス兄様!」
「お二人が優しいからですよ」
「由梨菜こそ」

楽し気な雰囲気と彼女達の笑顔に目を細めながら、彼は告げる。

「では、ご客人には最高のメリエンダをお楽しみいただきましょう。ペロリン♪」

少し芝居がかったその一言で、廊下に控えていたメイド達が飲み物が入った茶器などを運んでくる。
素人でも上等な品だということが分かる物だ。だが、由梨菜の目を引いたのはそれだけではなかった。
その皿の上には、彼等の店で出していない菓子や、彼女の好きな和菓子までもが並んでいた。

「"食べれば泣いてる赤子も踊り出す"。シャーロット家渾身の菓子を、どうぞ召し上がれ」
「こ、こんなにおいしそうなものを?」
(渾身のって言ってくれた。ペロスペローさんも、カタクリさんも……?)

そろりと窺うように顔を上にあげると、ちょうど目が合う。

「食べてくれ由梨菜。君を想って作ったのだから」

砂糖のような甘さを含んだ低い声に、由梨菜は菓子を食す前からお腹いっぱいになりそうだった。
実際その声は彼の家族に向ける"それ"とは違うものを含んでいるのだが、彼女は知る由もない。しかし、敬愛している兄の様子を見て察した妹二人は、長兄に目配せをする。

(ペロス兄!どういうこと!?)
(見ての通りだ)
(何て言うか……)

メイドよりも近くに立ち、由梨菜に菓子を勧めているカタクリは。とても幸せそうな顔をしていた。

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