小豆色の方



「食える花かー!いいなぁ〜!!」
「美味しかったか?!」
「うん。とても」

ガープ伝に聞いたのだろう。
朝礼前に話しかけてきたルフィとチョッパーは、由梨菜の返事に目を輝かせた。
女子の恋路云々の機微に疎い二人だが、共学になった時下心無く快活に話しかけてくれたことから由梨菜の大切な友人だ。

「オレも食いたい!」
「オレもオレもーっ!」
「アンタ達ねぇ、そんなに綺麗な飴細工買うお金あるの?由梨菜に払ってもらおうなんて考えてないでしょうね?」
「おいナミ!失礼だぞ!ちゃんと"肉貯金"で買う!」
「オレはドクトリーヌのプレゼントに買うんだ!」
「でも爺ちゃんに買うのもなぁ…」

悩むルフィに由梨菜は提案した。

「ならお兄さんに買ってみたら?」
「エースとサボか!」
「それに、見せてもらうだけなら私が買うときに出来ると思うよ」
「なら私も行くわ」
「ん?由梨菜はまた買うのか?」
「うん。御祖母ちゃんにあげたくて…」
「そっか。なら決まりだな!放課後集合だ!」
「「「おー!」」」

四人は各々学業に勤しみながらその時を待った。
そして放課後。

「着いたーー!」
「此処が?」
「うん。お店の名前が分からなくてちょっと迷ってしまったけど」
「ゾロよりはマシよ」
「あはは…」

本で見た異国の情緒に溢れた店構え。
風情ある街並みというものが由梨菜は好きだ。
軽妙な音を立てるドアベルが来訪を告げると、店の奥から男性が出てきた。

「いらっしゃいませ」
「おう!飴くれ!」
「はい。ではこちらからお選びください」

それは、前回とは違う店員だった。
ルフィとチョッパーが歓声を上げながら品物を選んでる間に、由梨菜は男性に話しかけた。

「あの…」
「はい?おや、この前来てくれた子だな。こんにちは」
「こんにちは。お菓子美味しかったです。祖母も知り合いも喜んでくれました」
「それは作った甲斐があった♪」
「今日はその時サービスで頂いた綺麗な飴を買いに。あと」
「あと?」
「あの店員さんにお礼が言いたくて」
「ほう。そうかそうか♪」
「お名前を存じ上げないのですが、こう…美味しそうな小豆色の方で」

その言葉に、店員とナミが吹き出した。

「ちょっ、由梨菜!失礼でしょ!」
「ご、ごめんなさい…」
「フフフッ…そうだな。髪色も瞳の色も小豆色と言ってもいいだろう♪」

朗らかに返された同意。

(優しい店員でよかった…)

スパン!とナミに頭を叩かれながら由梨菜は内心冷や汗をかいた。

「あの飴は少々値が張るが大丈夫か?」
「えっと…どれくらいですか?」

提示された金額は学生の身には手痛い出費。
うへぇと落ち込むルフィとチョッパーは、どうやらお小遣いが足りなかったらしい。

「やっぱり良いものは高いわねぇ〜!」
「─購入します」
「…大丈夫かい?」
「はい」

(少し"あるばいと"を増やせば大丈夫でしょう)

笑顔の裏でそんなことを考えながら、由梨菜はまた美しい造形の飴を購入した。

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