彼もこれからデートなのだろうか?
(だろうな。イケメンだし。彼女さんがいるなら…)
「あの、おにいさん?」
「ん?何だい?」
「今の私の格好、変じゃないですかね?」
「あぁ。清楚で清潔感があって、とても可愛いよ」
「かっ…!ど、どうも…」
思わぬ高評価に照れていると、背後から強い力で腕を引かれた。
突然のことにされるがままになっていると、地面に倒れるよりだいぶ早く、温かい腕の中に私は受け止められた。
「何してやがる」
「嫌だなぁ。仲良く話していただけじゃないか。警部補殿」
「ダニエルさん?」
「おや?君の待ち人は彼だったのか」
「あ、はい」
「コイツとこれ以上喋んな。口が凍る」
「口が凍る?!」
「目と口と耳塞いでろ」
「手の面積と指が足りない!」
あーだこーだ言いながら口を閉じ、目を瞑り、耳を手で押さえたのを確認したのだろう。
私を腕の中に収めたまま、彼は、おにいさんと二人で何事か話していた。
「行くぞ」
「わっ」
目を開くと既におにいさんの姿は無く。
私は疑問に思いながらも、痛いほど掴まれた腕を引かれるまま歩いた。
(何でこんなことになっちゃったんだろう)
暗い夜道をお互い無言で進む。
歩を進めるたび圧し掛かる不安。二人でいるのに、まるで一人ぼっちの様に心細い。
何だか悲しくなって鼻を啜ると、ダニエルさんは勢いよくこちらを振り向いた。
「寒いのか?」
「え?」
腕を離され、いつも見慣れたトレンチコートを羽織らされる。
「一人で待たせて悪かった」
「いえ…」
「アイツに何かされなかったか?」
心配そうに顔を覗き込まれ、私は何だかほっとした。
怒っていたのではないらしい。
「特に何も…。したのは私というか…」
「は?」
「あの、ダニエルさんは何度もしてるかもしれませんが、私デートなんて初めてで」
だから相談しました。と告げれば、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして彼は固まった。
「この服変じゃないかって。それで、あのおにいさんは可愛いって」
「…」
「ダニエルさんは、あの、その…どうですか?」
もじもじと、彼からの返事を待つ。
「…可愛い」
「え?」
「だから、どうにかなっちまいそうなくらい可愛いっつってんだろ!」
思わず聞き返すと、更なる誉め言葉に顔が真っ赤になる。
(でかい声で何を言い出すんだこの人は!)
「あ、ありがとうございます」
「おう…」
先程と同じく二人の間を沈黙が流れるが、なまえの胸中を渦巻いていた不安はもう吹っ飛んでいた。
「あ"〜、なんだ。仕切り直しだ。飯行くぞ」
「はい!」
二人の間に繋がれた手。歩き始めようとしたその時。
ピリリリリッ、ピリリリリッ。
「「…」」
ピリリリリッ、ピリリr
「俺だ。──あぁ、分かった。すぐ行く。お前等は先に行ってろ」
電話を切った警部補は、手始めに犯人をぶっ殺しそうな顔をしていました。
後日デートの感想を聞かれたなまえは、同僚にそう答えたという。