ショッキング・ガンナー
「いてて…」
目が覚めたといったな。あれは嘘だ。
次に彼女の意識と身体が一致したのは、汚い部屋の中だった。
まず、ぼろっちい。埃っぽい。更に換気をしていないのかカビも生えている。
ゴキブリがわんさと繁殖していそうなその部屋を出るために身体を起こすと、延長線上に、目が隠れるほど前髪を伸ばした少年がいた。
驚いているのか身動ぎせず、壊れた木の籠を持って固まっている。
「あの…」
「あ、あっ、兄上ぇええええええええ!」
此処は何処かと聞こうとしたら絶叫されてしまった。
(剣が怖かったかな?いや、いきなり家の中に現れたら不審者だよね)
心の内で謝罪していると、慌ただしい足音が近づいてきた。
「ロシー!!無事かえ!??」
「あ”に”う”え”ぇええええっ!!」
(あ、やべぇ)
本誌で見て知っている。
扉の向こうには、息を切らした、将来ピンクのモフモフになるドンキホーテ・ドフラミンゴ君がいた。
彼は震えながら泣く弟を自分の背中に庇うと、私に向かって小銃を発砲してきた。
胸からパッと花火の様に血が弾け、身体が傾く。夢の中で感覚が鈍かったのが不幸中の幸いだろう。
巻き戻るようにまた仰向けに倒れると、足先の方から悲鳴が聞こえる。
それは幼い彼等から発せられたものだった。
(いやいや。自分で攻撃しといてかい)
だが、まだ間に合うのかもしれない。
何もかもを恨み、蔑み、見下してしまうようになるまで。少しの猶予があるのかもしれない。
霞む意識の中、残っていた持ち物から防寒具と風邪薬を取り出し、彼等の方に押しやる。
震える手で、泣きながら近づいてきた子供の頭を撫でる。
余裕があればぶん殴って説教コースなのだが、時間は内容だ。
「おねえさんどうして…!」
「ゴボッ…こわがらせて、ごめん」
「お前!?おい!まだ死ぬなえ!起きろえ!!」
また身体が透けて来ていた。
どうやら二度寝から目覚めるらしい。
「消えないで!待って!」
「元気で、ね……」
(その目がいつか見るであろう絶望に、間に合いますように)
瞼を開くと。今度こそ、私は自分の部屋に戻っていた。