03
「
私に乱暴する気か!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」
「落ち着けって!何もしねぇから。あんまり叫ぶと具合悪くなるぞ」
「
声出ないからって馬鹿に…ぁっ!」
「危ねぇっ!」
病み上がりに興奮したせいか。いきなり動いたせいか。立ちくらみを起こして仄華はその場にしゃがみこむ。
机に頭をぶつけそうになったところで腕を引かれ、ダニエルの腕の中にぽすんと収まった。
(うぉお…煙草の匂いがする…)
「大丈夫か?」
「
は、はい…」
返事をしたが、やはり声が出ない。
助けてくれた男性の表情が変わらないので、伝わっていないと判断した彼女は。
「ん?」
彼の口の両端を指で上げ、微笑んだ。
「…人の顔で何してんだ」
「
ありがとうございます。もう大丈夫です。だからそんな顔しないでください」
「言葉通じてねぇなこりゃ」
「
とりあえず英語でお礼言おう。サンキュー!アイムファインです」
「頭は打ってなさそうだな。おい、とりあえず手ェどけろ」
読唇術で感謝の言葉を何とか拾い上げ、会話のドッチボールを終了させたダニエル。
怪しいことこの上無い彼女が自身に手を延ばし触れても、その事について嫌悪感を露にすることはなかった。
(自分の顔でやろうと思ったんだけど、ぶりっ子みたいだから止めてよかった。顔借りたけど怒らなかったな…男の人は怖いけど、この人は大丈夫かなぁ?)
顔から指を離すと、仄華はそっと手を握ってみた。
(トレンチコート着てるから、お医者さんじゃないよね?部屋間違えたのかな?)
「どうした?」
でも、助けてくれた。
感謝の言葉をもっと伝えたい。
仄華は考えて考えて、とりあえず握手した。
「…」
(まだ、怒ってないみたい)
「
あ、メモとか持ってないかな…」
「…書く物渡してみるか」
懐からペンと手帳を取り出した彼に彼女は反応した。何枚かのちぎったページとペンを手渡され、彼女は早速感謝の気持ちをしたためる。
満面の笑みで手渡されたページには。
Thank you for asking.
(本当にありがとうございます)
Thank you from the bottom of my heart.
(心を込めて感謝します)
と、書かれていた。
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