02
(あ〜スッキリした)
一人部屋にあるトイレに篭っていた仄華は、用を足し終えると伸びをした。
一度看護師が来たが、声を掛けられなかったので静かにしていた。
心配されていたとしても、流石に排泄音を聞かれると恥ずかしい。
先程ちらりと見た卓上カレンダーは、異空間に飛び込んでから丸二日が経過した日付。
(やっと、逃げられたんだよね)
その事実に笑みが溢れた。仄華はこれからの予定を考え始める。
海外に来る場合パスポートが必要だが、彼女にあるわけが無く。とりあえず現地の警察を頼ることに決めた。
(医療費は誓約書を書けば何とかなるかな、きっと!)
自分のいた世界と違うことに、この時点で気づいていない彼女は呑気だ。
手を洗い、トイレから出る。
空間の揺らぎを通る時に襲われたせいか、酷く眠い。
仄華はベッドに戻ると、そのまま二度寝したのだった。
数十分後。
「いるじゃねえか…!」
知らせを受け病院に到着したダニエルは、教えられた病室に彼女が寝ていることを確認して脱力した。
「…」
(前より顔色良いな)
息を整えながら見舞い客用のパイプ椅子に座り、被害者を観察した。
彼は、次元聴閲者の容体に変化が無いか確認し、上に報告しなければならない。
(なぁにが利用価値の有無を見定めよ、だ。毎日現場で誰が駆けずり回ってると思ってんだあの幾何学ハゲ)
顔色は良くなったが、まだ肉体的にも精神的にもダメージが蓄積されているのだろう。
だが、二日間もぶっ通しで眠っていてくれた間に彼女を調べることはできた。
「アンタ、一体どこから来たんだ?」
HLにも、外側の国にも。
彼女の痕跡は見つけられなかった。
着ていたキモノとやらを見て日本好きの部下がテンションを上げていたが、日本大使館で調べても、戸籍も移住者リストにも名前はなかった。
(まさか、エド時代から来たとか?)
「署内…俺たちの部隊じゃアンタ、事件解決に貢献したMVPって呼ばれてんだぜ。部下達も興味津々でな、話を」
「
うぅ…」
「!」
魘されて眉間に皺を寄せた彼女に、ダニエル警部補は思わず立ち上がる。
枕元にあるナースコールに手を延ばすのと同時に、彼女が目覚めた。
「…」
「…よぉ、大丈夫か?」
至近距離に男性の顔があることに気づいた仄華は、声なき悲鳴をあげると、ベッドの上から枕を持ち出しつつ転がり落ちた。
「
いやあああああああ!!」
「お、おい」
「
来ないでっ!」
思わず叫び、ベッドの下を通り反対側へと向かう。
威嚇するように枕を掲げると両手を挙げて男は静止した。
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