ミッドナイトスキャンダル




騒動、陰謀、神性存在。
常時事件が起きる人知の及ばぬ"向こう側"の街HL(ヘルサレムズ・ロット)は、今日も騒ぎのオンパレードが繰り広げられていた。


「配備まだかー?」
「後はD地点に人員配置のみです!」
「…あっやべ。今日ドラマの録画予約忘れてた」
「ずいぶんと余裕そうだなぁ、オイ」
「げっ!?お、お疲れ様です!ロウ警部補」

名を呼ばれたトレンチコートの男は、片目を覆う長い前髪の隙間から鋭い眼光を覗かせ、緩んだ態度でいた警備中のポリスーツに声をかけた。

「しっかりしろよ。お偉いさんからの依頼だ」
「はっはい!」
「相手はあの次元怪盗ヴェネーノだ。どこから空間裂いて犯行に及ぶか分からねぇ。しっかり目ぇ光らせとけ」
「了解!」

持ち場に戻るポリスーツを眺めながら、タバコのフィルターを噛み締めたダニエル・ロウ警部補はぼやいた。

「面倒事寄越しやがって…」

上層部からの依頼は特定物資の輸送と破壊。
想定される野次馬に冷やかし。混乱に乗じてのテロ。
秒単位で倍加または負の相乗効果を生み出すこの街の構図には、溜息と死の気配が欠かせない。

どうやら彼も、楽しみにしていたドラマは見れそうに無いようだ。

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