It’s just between us.
『おいコラ!#name1#!』
...やば。見つかった。
怒ってるっぽい声で呼ばれたから、恐る恐る振り返った。
「あ、偶然だね、」
『こんな暗くなっとんのに一人で帰るて!何考えとんねん!』
「...だ、だって、」
『誰も居らんなら俺待っとけや!』
「...はーい、」
信五は、見掛けによらず心配症だ。
“私のことに関して”心配症なのだと、母が言っていた。
喧嘩ではなくて、こうやってお説教されることも少なくない。けど、嬉しくないこともない。
この感情をなんと表したらいいのかはわからないけれど、これが恋なのだとしたら、...どうしよう。
『今日カラオケ行こうよー』
『#name1#ちゃんも行かない?』
声を掛けてくれた吉田くんを見たら、廊下から大きな声で名前を呼ばれた。
『#name1#ー!今日ははよ帰れよー?』
「えー、今日カラオケ行ってくる!」
『...ちょ、お前こっち来い!』
廊下から教室を覗く信五の前まで行くと、信五が教室をちらりと見てから言った。
『...あいつらと行くんか?』
「うん、吉田くん達。5人くらいいるみたいだけど」
『...#name1#、あかん。やめとけ』
「なんで!」
『なんでもや。ええからやめとき。な?』
宥めるように珍しく優しく頭をポンポンと撫でられた。
「そんなの納得出来ない!私もたまには遊びに行きたいし!」
『#name1#!』
大きな声を出されて、ビクッとしてしまった。...何よ。心配してくれるのは嬉しいけど、今はヤキモチで言ってるんじゃないことぐらい、私にだってわかる。じゃあなんで?理由も言わないなんて狡い。
「...やだ。信五のバカ、...」
背を向けてみんなのところへ戻った。わざと吉田くんと美希と腕を組んで、引っ張るように教室を出た。
全然集中出来ない。全然楽しくない。
なんであんな可愛くない態度を取ってしまったんだろう。
さっきの信五の顔を思い浮かべて溜息をつくと、隣にいた吉田くんが私を覗き込んだ。
『どうしたの?』
「...あ、ごめん!私やっぱりそろそろ帰ろうかな、」
『じゃあ送ってくよ。もう暗くなってるし』
“ちゃんと送ってもらって帰って来たよ”って言って、謝ろう。早く仲直りしたい。
『#name1#ちゃんち、あそこだよね?』
「うん。吉田くん、ありがとね」
じっと見つめられたからドキッとした。吉田くんの手が私の手首を掴んで、顔が近付いてきた。咄嗟に顔を逸らして腕を引いたけれど、ほんの少しだけ唇が触れてしまった。
「...離して、っ」
『なんで...?ダメ?』
『ダメに決まっとるやろー。離して言うてるやんか。耳付いてへんのか?』
私の手を掴んだ吉田くんの手を、信五が掴んだ。吉田くんの手がぱっと離れて、ごめん、と言って背を向けた。
私の肩を抱いた信五は何も言わずにそのまま家に入った。
『ただいまー』
『おかえりー。一緒やったんやねー』
『おん。...腹減って少し食うて来たから、飯あとにするわ!』
一緒に階段を上がり私の部屋のドアを開け、ベッドに私を座らせた。
両肩に手を置き、私を覗き込むようにみた信五が小さな声で言った。
『...あいつがな、この前、#name1#狙ってるー、言うて騒いでたの見てもうたんや』
「...ごめん、信五、」
『...ごめんなぁ、...俺がちゃんと、言うたれば良かったんやな』
「...気持ち悪かった、」
何時になく困惑の表情を浮かべた信五が、隣に座って私を抱き寄せた。ポンポンと背中を叩きながら頭を撫でられ、信五にしがみつく。
どうしよう。今、確信した。
私は本当に、信五が好きみたいだ。
「...お願い、消して、」
『...ん?何をや』
「...信五で、消してよ、」
意味を理解したらしい信五が、一瞬だけ戸惑ったような表情を浮かべた。けれど、すぐに真っ直ぐに私を見つめた。
『...そんなんなぁ、...いくら兄妹でも、勘違いすんで』
撫でていた頭を引き寄せられ、すぐに唇が重なった。離れそうで離れない、食むように何度も繰り返されるキスの合間、唇が離れた瞬間に信五が呟いた。
『...#name1#、...めっちゃ好きや、』
End.
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