euphoria


Zip your lips!!


幼稚園は、同じチューリップ組だった。それが当たり前だと思っていた。
けれど小学校からは、双子は同じクラスになれることはないんだと知って、二人共大号泣したのだと、母が最近教えてくれた。

「りゅうへー!」
『なーにー』
「お弁当忘れたぁー!」

隆平の周りにいた友達が笑っていた。当たり前だ。だって、昨日も忘れたんだから。

『またぁ?なんで毎日忘れんねん!...ほら、俺の食べ』
「...一緒に食べようよ」
『もー、ほらわかったて。行くで』
「屋上ね!」

隆平が友達に一言告げて、教室を出た。それを恨めしげに見つめる視線があることを、私は知っている。けれど、隆平には教えてあげない。
...そのために昨日もお弁当を忘れたことも、勿論教えない。

『めーっちゃええ天気やなー!』
「うん。食べよ」
『パン買うてくればよかったなぁ』
「私少しでいいから隆平食べなよ」
『あかんて!昨日と言うてること同じやんか!』
「...ダイエット中なの!」
『全然太ってないやん、』

二つあったオニギリを一つ私に差し出すと、今日は絶対半分こ!と隆平が笑った。
子供の頃から変わらないこの笑顔が大好きだ。だから、隆平が誰かのものになってしまうのは、ちょっと悲しい。

「...隆平ってさ、好きな子居るの?」
『な、何、急に、』
「...なんとなく?」
『...居れへんで』

何この反応。居そう。すっごく居そう。
...どうしよう。あの子だったら。あの子じゃなくたって、隆平は優しいから、すぐに彼女が出来ちゃう。
せめて、同じクラスに居られれば、いつも見張っていられるのに。

「...居るんでしょ」
『...な、なんで?』
「わかりやすいもん。隆平」
『...そんなこと、ないわ、』
「......可愛い?」
『...せやから、もー...』

ちょっと困ったように頭を掻いた隆平が、私をちらりと見てから視線を落とした。

『...ヤスとかな、友達がな、自分の姉ちゃんとか妹は可愛い思わへん言うねん』

いきなりなんでそんな話になっちゃったんだろう。よくわかんないけど、首を傾げつつ隆平をじっと見つめた。隆平はバツが悪そうに目を逸らしたまま合わせてくれない。

『...俺はな、...一番やねん。...#name1#が、』

何それ。...嬉しい。そんなこと隆平から言われたの、初めて。

『どの子よりも#name1#が一番可愛い。...それに、いつもこんなんして#name1#の面倒見とったら、俺彼女なんか出来ひんわ!』

隆平が笑って私の頭を撫でた。
やばい。嬉しい。すっごい嬉しい。
...よかった。

......あれ?よくないか。これは、隆平の優しい嘘かもしれない。
高校生だし、隆平だって、好きな子くらい居て当然だ。

「...なんか...私ばっかり面倒見てもらってさ、隆平のこと困らせてるね」
『そんなことないで。俺は困ってへんよ』
「隆平の我儘なんて、聞いたことないよ」

笑っていた隆平が黙って私を見た。
少し卑屈になっちゃったから、気にさせちゃったかな...。

『...ええの?困らせても、』

私から目を逸らした隆平がそんなことを言うから、え?と聞き返した。

『...ほんまに困らせることするで?』

何言ってんの。と思った時にはもう、抱き寄せられて唇が触れていた。
...嘘。キス、しちゃった。

隆平が立ち上がって私の手を引いて立たせると、扉の裏の死角に引っ張られた。

壁に押し付けられて隆平を見ると、また顔を近付けられてぎゅっと目を閉じた。隆平の唇が触れたのは頬で、期待してしまったことに恥ずかしさが込み上げた。
耳元に移動した隆平の唇と吐息が、耳を掠めてドキドキする。

『...な?困るやろ?...せやけど、もう遅いわ』

囁くように言った隆平が再びキスをして、さっきとは比べ物にならない程の激しいキスに、歓喜と罪悪感で体が震えた。


End.

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