euphoria


It's a secret!!


『#name1#!アレ、...』

友達の指差した先には、裏庭で先輩らしき男と向かい合って立っているすばるがいた。
先輩が掴んだ胸倉の手を振り払ったすばるから、到堪れず目を逸らした。

すばるが負けることは多分ない。だからと言って、ずっとそれを見ていられる程の余裕もない。
面白がって笑いながら窓から顔を出している他の生徒が、煽るようなことを言うからその場から離れた。

こんな場面はしょっちゅうだ。けれど、すばるをあんな風にしたのは多分私だ。
幼い頃、苛められた私を庇って『絶対強くなってやる』と上級生に立ち向かって行ったのが始まりだと思う。

あの頃の私には、すばるは兄妹ではなくヒーローみたいに見えたけれど、今となれば、周りからはただの不良に見えてしまう。


『...サボったんか?』

私の部屋を覗いたすばるがドアの隙間から声を掛けた。

「うん。すばるが裏庭にいるの見てから帰って来た」
『...見てたん、』
「...うん」

バツが悪そうに頭を掻いたすばるが、部屋に入って来た。近くで顔を見たら、唇が少し切れているみたいだ。

「...それじゃあ見てなくてもわかるよ」
『...まあな』
「...やめないの?...そういうの」
『別に俺から手ぇ出してるんちゃうし』
「...そうだけど、」
『来年なったら、上に呼び出されることなくなるし、落ち着くんちゃう』
「...じゃなきゃ困るよ。...学校で全然話せない」

ベッドに横向きに寝転んで、手で頭を支えていたすばるが、ふっと笑って私を見た。学校の時とは比べ物にならない程柔らかい笑顔。

『わざわざ学校で何話したいん』
「...何ってわけじゃないけど、」

ベッドの上のすばるが手を伸ばしたからその手を取った。引き寄せられてすばるの上に乗ると、じっと見つめられる。突然くるりと視界が変わって、すばるの向こうに天井が見えた。

『今のままでええんちゃう』
「...何で、」
『今のままなら、怪しまれるとかまずないやろ』

ゆっくりと近付いたすばるの唇が、熱を移すように私の唇を食む。舌に微かに感じた血液の味に目を開けると、すばるが離れて髪を撫でた。

『こんなん、学校でもしたいんや?』
「...違うし、」
『したってもええねんで』

口端を上げて笑うすばるを一度睨み付けてから、すばるの切れた唇に舌を這わせた。血液の味のする唇は、熱を持って少し腫れている。傷口を舐めても動じないすばるが、私の髪を撫でて唇から引き離した。

『...なんや、心配してるんか』
「...当たり前でしょ」
『そんなんされたら、止まらんくなるやん。オカン、居んねんで』

すばるを見てから、すばるを抱き締めて引き寄せ、胸に顔を埋めた。
たまに、すばるがどこかに行ってしまいそうに感じて焦る。

私の頭を撫でる手は、学校で見るすばるからは想像も出来ないくらい優しくて温かいのに。

『...逆に燃える?』
「...燃えない」
『#name1#ー!』
『...オカン、呼んでんで』
「どいて、すばる」

そう言って胸を押したらすぐに唇を塞がれた。密着するように唇を塞がれたまま舌を絡められて、吸い上げるから呼吸が苦しい。

『#name1#ー!寝てるのー?』

もう一度お母さんが私を呼ぶ。
諦めたらしいお母さんが、リビングのドアを閉める音がした。
ニヤリと笑ったすばるを睨み付けてまた胸を押すと、その手がすばるに掴まれた。

『...そんな心配せんでもええんちゃう』
「え、」
『俺らはほんまもんちゃうねんで。いつか分かってもらえるやろ』

本当の双子じゃないのに、なんで私の考えてることがわかるんだろう。
...そっか、愛されてるからか。
兄妹じゃないと知ったその日に
『愛してる』と高校生らしくない告白をされたあの日を思い出した。

『それまでゆっくり待てばええねん。...隠すのも、なかなかスリルあるしなぁ』

いやらしく笑ったすばるに掴んだ手をベッドに押し付けられ、再び唇を塞がれた。

『...とりあえず、俺が守ったる』

私も守るよ、とは言わせて貰えなかった。いつも自分を犠牲にして私を守るすばるに息も出来ない程のキスで今日も封じられて守られる。


End.

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