隣の大倉さん。
近所のスーパーから、大量の荷物を抱えて歩く帰り道。
『あ、#name2#さんやん』
「お、大倉さん、...」
『買いすぎちゃいます?夜逃げでもしはるんですか?』
「野菜抱えて夜逃げとか、ないでしょ、」
笑いながら私の手にある、パンパンになったビニール袋をひょいと持ち上げた隣の大倉さん。ああ、助かった。
『今日の飯、なんですか?』
「今日はシチューの予定ですね」
『...ええなぁー...いつも夜、#name2#さんちからええ匂いすんねんもーん...』
「あ、シチューくらいなお裾分けしましょうか?」
『ほんまですか!食いたい食いたい!』
大倉さんの胃袋を掴むべく気合いを入れてシチューを煮込む。とにかく煮込む。大倉さんのことばっかり考えて煮込む。
「あ、大倉さん」
再放送のバラエティー番組にはお腹を抱えて笑う大倉さんの姿が。可愛いなぁ。
すると隣の部屋から同じ笑い声が聞こえてハモる。
すごい環境だ。ファンならずとも羨ましい環境だろうと、我ながら思ってみる。
「よし!出来た!」
時刻は18:30。さあ、大倉さんに届けねば!でもどうやって?大倉さんに聞いてこよう。
ピンポーン。
............あれ?
ピンポーーン。
..................え!!
大倉さん、もしかして、いないの?
さっきの、食いたい!は何?社交辞令? ...そりゃないよ大倉さん。
シチューやサラダを皿に盛りテーブルへ運ぶ。
『くそー、大倉め...』
手を合わせて一人で食べ始めたシチューは、味見の時より全然美味しくない。大倉さんに食べさせなくて、良かったのかもしれない。
ピンポーン。
『もう出来たー?』
「...え、」
『めっちゃええ匂いするー!』
「え、あの、」
私の顔をまじまじと見た大倉さんが眉間に皺を寄せた。
『ちょ、まさか先食べたのー?!めっちゃ口についてるやん!』
「...だって、大倉さん、居なかったし...」
『え!...ちょ、待って!俺今#name2#さんと一緒に食べよ思て、ワイン買ってきたんやでー!』
「...えぇー...そう、だったんだ、」
『もー、上がるで!お邪魔します!』
半ば強引に家に上がり込んだ大倉さんは、勝手にシチューを温め、『皿!....ください、』と言って私を見た。
皿を差し出した私の顔を、皿を受け取らずにじっと見ているから「大倉さん、」と声を掛ける。
次の瞬間、大倉さんの顔が近づいて来て、私の口元を舐めた。驚いて固まる私から少し離れ見つめると、今度は唇に唇がぶつかった。
自然に閉じた目を唇が離れると同時に開けたら、大倉さんと視線がぶつかった。
『...つ、ついてたで、口に...』
「...え、?あ、...どうも...」
『...嘘。ついてたからとかやなくて、したかったから、キス、した』
そう言って今度は抱き締められて唇が重なった。
私の手から滑り落ちた皿が割れる音を遠くに聞きながらキスに溺れた。
End.
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